くりふ

ロボットのくりふのレビュー・感想・評価

ロボット(2010年製作の映画)
4.0
【健啖デジタルマサラ】

完全版という名の通常版でみました。一番感心したのはマサラムービーの咀嚼力。既視感の断片を集めたのに強引見事なインド味に。文字通りマサラの本領発揮。

が、デジタル化の功罪も出ているなあ、とも感じた。人間力とCG力のバランスはよかったけれど、良くも悪くも、アナログだったら激辛だったろうものが、中辛くらいに薄まっている、と思いました。

インドのIT産業発展とカーストの関係は色々言われているようですが、庶民の代表として、主に成り上がる役を演じてきたろうラジニさんが、しっかりIT寄りジャンルからの成功者として登場してくるのが、時代だなあ、ととりあえず思った。

ラジニさん、濃ゆいのは相変わらずですが、それが渋みに変わってきましたね。さすがに疲れてきたか、クンフーとダンスでは代役も挟んでいるようでしたが。

ラジニ映画としては、ラジニ神話として登り詰めた後、神が複製を始めた…という流れに見えて面白い。ギリシャの神々みたいに欲望まみれですな。自分の体を張っていたラジニが、老いて代役を創る、と見えちゃったりもして。自分の手でロボにヅラを被せる、というのは自信なのか自虐なのか (笑)。

主演カップルの、作中でのバランス感覚が面白かったです。

元々、主役はシャー・ルク・カーンの予定だったそうですが、それがタミルのヒーローに変わったことで、ヒンディーのスターであるアイシュワリヤーさんをより立てるように配したのかなあ、という気がしました。ダンスシーンなどは、ほとんどアイシュさんが引っ張ってますよね。まあ、それこそ単純に、体力的な問題かもしれませんけど。

アラフォーのアイシュさん、熟女の高温エロスがすごかった。二の腕ぷるぷるがもぉーエロいことエロいこと!(笑) 彼女のダンスは全て必見。全てを知る女は腰の動きが違う!(…まぁいやらしい)なのに女子大生役って…。不勉強だからウン十年ダブったのでしょうか。

首の皺はCGで消した方がよかった気がしますが、大きなお世話でしょうか(笑)。…いえもちろん皺含め、彼女を眺めているだけで十分、楽しかったんですけどね。

バカCGも面白かったんですが、日本だと三池崇史辺りと同質なセンスを感じて、斬新とは思いませんでした。エスカレートする直線的バカバカしさはあっても、昔のラジニ映画のように、突拍子もない所で歌い出すような意外性が出て来ない。

実写の皮膚感覚でバカCGを使いこなす、というのは次の段階でしょうかね。ここでもマサラ独特な和え方が出て来るのを期待してます。

お話としては、ロボがダークサイドに堕ちてからの方が、断然面白いですね。「雷」の使い方に感動!フランケンシュタイン以来の伝統を守ってますねえ。

ところで、インドでは絶対人質になっちゃダメですね。警官に撃ち殺される!(笑)。

あと、極彩色!これもデジタルの影響でしょうが、かたちを際立たせる色でなく、色そのものが、画面の前に出てきています。透明感があって浸れるんですが、マサラのこってり感とは離れつつあるので、今後どうなるか気になるところです。

(当時)今後、シャー・ルク・カーンの『ラ・ワン』も公開されますね。同系統だし興味あるのですが、予告をみる限り、なんとも…と感じる今日この頃。

<2012.7.25記>
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