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麦秋のomdのレビュー・感想・評価

麦秋(1951年製作の映画)
3.9
そうか、これは紀子三部作というのか。なんか似たような名前の人がよく出てくるなあと思ってた。

三部作に共通するのは、紀子がお嫁に行くこと(あるいはお嫁に行ってもいいと決意すること)で家族が消滅したりバラバラになったりすることだ。他二作品だと、紀子はお嫁に行くのを拒むことで家族を守ろうとするけれど、本作ではむしろお嫁に行くと自ら決めることで家族に幕を下ろす張本人になっている。

なんで毎回毎回紀子にそんな重荷を負わせるのかというと、世代の問題なのだろうか。紀子より上の世代は「結婚は家で決めること」という考えで、一方、紀子の世代は「結婚を個人で決めるのもへんだけど、でも、家が決めるのもへんかもしれない」という、結婚や家に対する見方が転換するちょうど狭間の世代だ。だから単純な世代間の対立にはならず、もっと微妙な不安定な関係性が家族との間に生じることになる。その微妙さを描きたいからこその紀子なのかもしれない。

この作品の紀子は他ニ作品の紀子に比べてずっと明るくて幸せに見える。他ニ作品の紀子は家族にしがみついてたから、どうしても暗くなってしまいがちだった。いつか壊れるものにしがみつく人は暗い。壊れても、その先に新しい何かがあると信じられる人の方が明るくなれる。
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