ちろる

赤ひげのちろるのレビュー・感想・評価

赤ひげ(1965年製作の映画)
4.6
逃げ出したくなるくらいの、苦しみに満ちた臨終に立ち会う医者は、昨今果たしてどれくらいいるのだろうか?

まず死をみつめてそれから生を知る。
そんな、まるで悟りを開いたような赤ひげの凄みが、これまで黒沢塾を重ねてきた三船の凄みと重なる。

驚くべきは威厳に満ちた雨や風の表現。これは黒澤映画ならではではないだろうか。
カメラワークの凄み故に名シーンがありすぎて、書いたらきりがない。
登の閉ざしてしまった心も、おとよのさらに閉ざされた心と合わされば開かれる。
不幸せだ、惨めだと思った自分が、いざ貧しき者の集まる養生所に籍を置けば、自分の惨めさすらちっぽけな事に思えてくる。

前半は死を描き、後半は生を描く。
登が社会を学んでいくところからりだんだんとおとよが生きることを学ぶ展開になる展開から、もう涙が止まらない。
根岸明美さんの演技もさることながら、
小鼠役の子役の坊やまでも演技泣かせてきて、このストーリーそのものだけではなく全ての役者陣の魂の競演ぶりがこの作品に凄みを与えたのに違いない。
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