前半と後半で人間関係もテンポもがらりと変わり、最初と最後の磔シーンで見えるものも違う。まとまりのとても良い、きれいな作品。浄瑠璃を意識させる音とストーリー展開が、カメラの動きで映画化されているのもおもしろかった。
江戸時代の実話と近松門左衛門作では、2人は密通のために出奔した先で捕えられる。本作では、逃避行中に密通し2人揃っての磔刑を選ぶと改変された分、逃げ回るシーンの動の表現と2人の変化による盛り上がりが大きく見える。
2人の役者もよかったけれど、この時代の制度や風習と息子との板挟みになった茂兵衛の父の言動が印象的だった。