ピロシキ

七人の侍のピロシキのレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
4.4
日本映画の歴史的傑作、そして黒澤明の代表作。とはいえ「映画好きならとりあえず観とけ!」のノリで初めに選ばれる作品にしては、ハードルが高い。なんせ長いし。そんなわけで、学生時代の自分が一人暮らしの小さなテレビで初めて鑑賞したときの感想は、実にシンプルだった。
「長い。なんかめっちゃ戦ってた。以上」である。

それから10年あまりが経ち、今年に入ってうっかり「乱」を観たことがキッカケで火がつき、勝手に始めた黒澤明マラソンを一人で無事完走。なんとぜいたくな暇つぶしだろう。とっても楽しい全30作品でした、自分で自分を褒めたいです。そして、ラストに決めたのはやはりこれ。改めて「長い」以外の感想が浮かんできたので、また忘れないように少し書き残してみようと思う。

たしかに普通に考えて3時間半は長すぎるが、力の入りっぷりと金のかかりっぷりがとにかくハンパではないので、ここまでやられたらもはや何も気にならない。まず侍が7人揃うまでにアッサリ1時間かかるけど、別にぜんぜん構わない。一人ひとりの武士の個性をしっかり焼き付けるために、この尺は必然だったのだろう。

決戦のシーンの迫力に押されて記憶からはすっぽり抜け落ちていたけど、決戦前夜に村の娘とネンゴロな関係になってしまう若い侍がいたり、炎上する水車小屋から救い出した赤子を抱いて「こいつは俺だ!」と自らの生い立ちに泣くミフネがいたり、なかなかエモい。

そして、野武士たちを追い払ってヤッター!メデタシメデタシで終わせないのが、黒澤明。「勝ったのは百姓たちだ」土を耕し、作物を植え、育て、刈り取り、守る。そのために払った代償は、田んぼの隣に四つ並んだ、墓。

人間は、欲望に対してどこまでも正直になれてしまう生き物だ。自分自身の幸せのためにたとえ誰かが不幸になっても、涼しい顔して飯食える人だっているわけだし。「七人の侍」が圧倒的に優れた時代劇である理由は、その驚異的な表現方法だけではなく、誰かのために命がけで戦った侍たちの生き様がありありと描かれているからである。

改めて、そのうえで

長い。なんかめっちゃ戦ってた。以上!
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