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七人の侍のmarohideのレビュー・感想・評価

七人の侍(1954年製作の映画)
4.0
 長年観なければ観なければと思っていた一作。アクション映画に分類されていたので派手なチャンバラのある時代劇かと思っていたが、実際は戦争映画であった。

 全てが薄汚れているのが良い。この汚れ方があまりに自然なのでそれだけで惹き込まれる。常にむせるような砂埃か憂鬱な泥土の臭いのどちらかがするような画面。百姓たちも当然汚く、きっとすえたような臭いがするはずだと想像できる。ここまで嗅覚が刺激される映像というのも珍しい気がする。

 百姓が良い。物語上の弱者というポジションに収めさせない描写力があった。無知で臆病、自分本位で浅ましい。時折本当に憎たらしく見えるのだが、作中で菊千代が言うようにそれすら身分制度や戦争に由来するのでなんとも言えない気持ちになる。
 他の時代劇で武士が百姓をイジメるシーンなどを見ると哀れにも思えるが、これを見ると彼らを無条件に見下したくなる気持ちもわかってしまう自分がおり、説得力があった。

 馬が良い。騎兵が怖い映画。戦闘シーンは基本的に歩兵視点で見ることになるので迫りくる騎兵が怖いったらない。数百キロ単位の質量があの速度でぶつかってくるのだから怖いに決まっている。
 それから怖いと言えば竹槍が怖かった。第二次大戦のせいで微妙な武器と思いがちだった竹槍だが、映画内の百姓が持つ竹槍には生々しい殺意が宿っておりかなり怖かった。

 音楽や効果音も良いが、それがかえって無音のシーンを引き立てていた。エンディングの苦々しさも戦争映画ならでは。面白かった。
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