ハレルヤ

白いリボンのハレルヤのレビュー・感想・評価

白いリボン(2009年製作の映画)
3.5
第一次世界大戦直前のドイツ北部にある閉鎖的な村で相次いで起こる不審な事件。その出来事を通じて村の暗部が浮かび上がるサスペンス。

監督はミヒャエル・ハネケ。それだけで大体どんな作風なのかが分かるのも、それほど彼の作品が他と比べられないくらい独特だから。

彼の他の作品を見ても分かるように、モヤモヤしたり、イライラしたりと観客を翻弄する一筋縄ではいかない作風なんだろうなと思っていましたが、実際その通り。やはりミヒャエル・ハネケならではの作品。

まず登場人物多いですね。子供も多いので、どこの子なのか、どんな関係なのか色々噛み砕きながらじっくり鑑賞してたので、劇場で見てたらもっと混乱してたかも。

舞台となる村は男の権力の強さが際立っていて、学校や家庭において女子供に圧力をかけ、抑制する悪しき風習があります。排他的であり、見てて嫌な気分になるような場面も劇中で数多く。

それを劇中でのナレーションも務める他の村からやってきた教師の目線から描かれるのが、本作の特徴。ハネケ監督の作品では珍しくナレーションがあって驚きでした。無かったら余計に混乱だろうな。笑

そんな村なんだから何が起こってもおかしくないよなと個人的に思いましたね。一連の事件でも犯人が分かるどころか、逆に謎がどんどん深まっていくのもハネケ作品らしさ。

最後もスッキリしないんだろうなと思ってたら案の定。明確な答えは示さず、観客の解釈に委ねています。

今の時代でもあるパワハラやモラハラ、力のある人間が人の自由を押さえつける悪習は、100年前も今も変わらない。それに伴って押さえ込めばいつかは自分に返ってくるというメッセージを突きつけられた気がしました。

モノクロながらも美しさと虚しさが同居する映像も趣がありましたし、盛り上げどころが無くとも、2時間20分という長さをしっかり見せてくれるのは監督の熟練の力量でしょう。

ただ確実に誰にでもお勧めできるような作品ではないし、僕自身も2回目までは多分見ないと思うのでこの点数。
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