たぶ

2046のたぶのレビュー・感想・評価

2046(2004年製作の映画)
4.0
ウォン・カーウァイの作品の良さがわかるようになってきたのは、ようやく最近な気がする。

天使の涙や花様年華に似たシチュエーション、雑踏にある部屋が舞台で、チャイナ服の女たちとオシャレスーツのトニーレオン。基本的時間帯はジメジメした夜。色彩的には基本は緑系アンビエントで、たまにネオン的に赤の差し色。
しかしまぁ、女の背中に壁でトニーレオンが圧迫してくる、これぞザ、ウォン・カーウァイ!と思わせるシーンが幾度か見られて、期待に応えてくれる。

キャストもカーウァイらしく、一流がうじゃうじゃ出てる。コンリー、チャンツイー、ドンジエら謀女郎(チャンイーモウの発掘した女優たち)もいっぱい出演してて、豪華なオールスター戦を見ている感じ。
トニーの色気は衆知のとおりで、木村拓哉の色気も負けていない、トニーの劇中の小説の主人公としてトニーの分身になっている。薄めのチョビヒゲも両者とも似合ってる。
舞台ロケにはお金をかけずに、キャストはやはりお金かけてるね。

2046は一国二制度の終わりを意識したシナリオらしい。
大陸デビューの女優さんたちは、やはり大陸側(共産党)の象徴として使ってるのかな。でトニーレオンは香港人の象徴、いや香港人である監督自身かな。
コンリーは、ボロボロになりながらもプライドは高く、多くは語らない(自由に語れない)人、資本主義と交わらず、不正も厭わない古い世代の大陸人、
チャンツイーは、当初は理解し合えないけど心を開き香港にすり寄っていくが、香港からノーサンキューを言われちゃう現世代の大陸人、
ドンジエは新世代の(大陸と香港がむりくり交わり始めた頃の)イケイケドンドンで品の無い大陸人。

ところでキムタクという日本人は何の象徴?資本主義国として安定している国ってことで憧れの象徴か?混乱に乗じて美味しいとこ(フェイウォン)を奪っていくちょっとイヤな存在か?
憧れで?悔しくて?なぜトニーレオンは妄想(小説内)で日本人になった?うーんよくわからん。

トニーレオンがずっと広東語の台詞で、話し相手の大陸女優たちは北京語の台詞を崩さずに進行するところも、会話はするけど絶対に大陸と交わらないぞという監督の意志を象徴してる気がする。
香港側のフェイウォンが日本語を一生懸命勉強しているのも(大陸ではなく外国への憧れの象徴)。

で、女を弄んでいるトニーレオン(香港)がほんとうに好きなのはフェイウォン(香港)な訳ね。

香港を中心にシンガポールやプノンペンが劇中で話題になるが、2046年には、香港人の逃亡先がカナダではなく、シンガポールやプノンペンになるとにらんでいるのかな?それとも単に1960年代当時、シンガポールとプノンペンに華僑が多かったってだけ?
たぶ

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