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リアンナの堊のレビュー・感想・評価

リアンナ(1983年製作の映画)
3.9
フラハティ映画の暴力性だなんかを論じている大学教員で浮気性のインテリ夫を放って、暴力的な一人暮らしをはじめる妻を主人公にした中高年のカミングアウトをめぐる話。なんて筋書きだけなら『Late bloomers』(1996)に近い印象があったけれど、子から呆れられ、「孤独が怖い」と呟きながら部屋の隅で暗闇を惚けたように見つめ続ける主人公を捉えたこの映画は同じくどこにも行けない「わたし」を描いた『レーチェルレーチェル』に近い印象を与える。彼女たちにはまずなによりも居場所がない。ここではない何処かへ向かって破滅を迎える楽観性も悲観性もない。ただ終わらない日常とやりようもない性欲がゾンビのように横たわっている。2000年代に撮られたならばもっと明るく、モノローグのひとつでも付されただろうシークエンスにおいて、彼女はただトロンとした目をカメラの前でさらけ出すのみ。語り草になっている静かなベッドシーンといい、コーマンの元で『ピラニア』の脚本やってた人がどうして…とも思える。シスターフッドの名の下に資本主義的なレズビアンエクスプロイテーションフィルムが乱造されている2020年からしても83年にこの先進性は凄まじい。 ベイビーイッツユー、The Brother from Another Planet 早急に観なきゃ。
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