このレビューはネタバレを含みます
原作未読。
途中で転換点となる部分があるわけではなく、桐島が黙って部活を辞めたことと映画部が勝手にゾンビ映画を撮ることから少しだけ事件が起きていく。
それだけではあるが、各々のキャラクターの経験、考え、振る舞いが変わっていくのが、さまざまな視点から映し出されていく。
本当に視点が変わるだけで、語りの部分などはないのにいろんな立場で物語を鑑賞できておもしろかった。
本作では「格」が上のグループ(その中でも格差があるが)、と下のグループであったり、本当の「楽しみ」の有無であったり、「恋愛感情」であったりと、さまざまな人間性の違いが描かれていてリアリティがあった。
「格」が上のグループが下のグループを馬鹿にするが、心の底からそう思ってる人もいるし便乗しているだけの人も、否定する人もいる。また、下のグループも、陰で反発する。(劇中終盤では正面から立ち向かったが・・・・・・。)
「楽しみ」としてイケメンで運動できて...という人たちの中にも、熱中できるものがなく、人生を楽しめていない人もいるし、劣悪な部室に押し込められたオタクたちの方が人生を楽しんでいるようにも見える。
映画部部長はバカにされ、先生に指図されながらも、野球部キャプテンは評価も、実績もないながらも、その道のプロになれないとわかりつつ、好きなものを追いかけている。
また、その姿を見た万能人は、虚無感に襲われる。
「恋愛感情」は、叶わない人、叶う人、ひけらかす人、隠す人、本当に好きな人、真剣でない人、誤解する人、される人など、多くのものが存在する。
どれも人間関係、格の違いなどで結ばれなかったり勝手にできたりしてしまうが、いずれにしろそれが事件となることもある。
高校という狭い空間、時間の中で、これらのファクターがあらゆる事件を生み、霧島でさえ部活を辞める。
自分は映画部側の人間だが、いろんな人間の物語を観れて楽しかった。