青山

フィールド・オブ・ドリームスの青山のレビュー・感想・評価

3.8

野球が嫌いです。
小学生の頃、友達と野球をやってると私が打つ時だけ5ストライクまで許されたりボールを下投げしたりというルールが作られたりするほど下手だからです。
それでもその頃はみんな優しいからそういうルール作ってくれてなんとかやっていけましたけど、これが高校とか大学の授業になると私だけそんな訳にもいかないからチームのゴミ共にいじめられてツイッターに「死ね死ね死ね死ねゲロクズ野郎どもめFuck」などと投稿する暗い野球人生を送ってきたからです。

だから、見始めた時に本作が野球にまつわる話だと知って「あんまりガチなやつなら途中でやめよう」とホラーを見る小心者みたいなことを思ってしまったのですが、杞憂でした。
というのも、たしかに本作は野球が軸の話ではありますが、そればっかりではなく、わくわくするような奇妙な展開と、熱い人間ドラマがあるからです。


トウモロコシ畑をやってる主人公が、「"それ"を作れば、"彼"が来る」という謎のお告げを聞くところから物語は始まります。"それ"というのが野球場のことだと直感した主人公は、声に従って野球場を作ろうと奮闘します。
この辺まで見て「野球場を作るまで」のお話なのかと思いきや、なんと野球場自体はすぐ出来ちゃって、ここから物語はどんどんヘンテコな展開になっていくんです。
見ながらハッと我に返ると自分は一体何を見ているんだろうとか思っちゃうんですが、しかしそれでいてそれぞれのシーンがとてもエモいんですよね。なんかこう、どこがどうとは言えないけど、知らない人を訪ねてはだんだん心通わせていく感じとか、幽霊(?)たちの出てき方とか、なんか感動しちゃうんですよね。

で、そんな感動を作ってるのがたぶん脇役の魅力でありまして。
作家さんの気難しいのになんだかんだ優しいところの可愛さとか。
奥さんがめっちゃ綺麗だしめっちゃいい奥さんでこんないい奥さんおらんやろって思うけどあの豪快な笑い方にすごいドキドキしました💓これが恋か💓
あと、これが遺作となったパート・ランカスター氏がめっちゃいい味で、この役が遺作であること自体がもう一つのドラマであり、作品外部のことではありますか感動しちゃいました。

そして、最後にはきちんと物語が主人公のものになるところも粋ですね。今まで積み重ねてきたものが伏線ってほどじゃないけどラストで収束する気持ち良さ。ここまで来て初めて、この奇妙な物語のテーマがこのシーン自体であることに気づかされて鳥肌が立ちました。

野球嫌いでも楽しく見られて泣ける人間ドラマでした。時代背景やアメリカの文化を知ってればもっと楽しめたかもしれないけど......でも十分とても面白かったです!
青山

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