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この自由な世界でのesのレビュー・感想・評価

この自由な世界で(2007年製作の映画)
3.9
拝金主義が齎す底無し沼。地獄というのはこの世界の事を言うのかもしれない。
移民を受け入れるのであれば万全な体制を整えなければならない。無計画に受け入れることで状況は悪化し崩壊を招く。結果として近年のEU離脱問題の要因の一つにこの移民問題が挙げられた(実際の国民感情が違ったとしても離脱への理由の一つとして利用されるだけの説得力はあった)。不法入国者の遺体がコンテナから大量に発見され、受け入れをと嘆く一方で受け入れれば対立が起こる。答えは一体どこにあるのか。最終的に行き着くのはすべての人々が自国で安全に暮らせる争いの無い国だと思う。拝金主義の戦争屋がいなければ母国を失う人は確実に減る。

今作のような映画を観ると誰かを足蹴にして幸せになる世界になんて生きたくないと思うけれど、現実では複雑な仕組みの中でもっと分かりづらく誰かを踏みにじりながら、誰かに踏みにじられながら生きている。
こんな世界では声を上げ闘うよりも諦める方が楽だ。多くの人は「そういうものだ。仕方ない」と自分に言い聞かせてしまう。
だからこそ、長年に渡り声を上げ続けるケン・ローチ監督の作品は凄いと思う。
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