三樹夫

エアフォース・ワンの三樹夫のレビュー・感想・評価

エアフォース・ワン(1997年製作の映画)
2.9
『ダイ・ハード』in エアフォース・ワンという映画。話はエアフォース・ワンがテロリストに占拠されるも大統領がステルス戦闘で一人孤軍奮闘するというもの。過去『U・ボート』で基本的に潜水艦内の場面ばかりの映画を撮った実績からか、だったら飛行機内での話の映画を撮れるだろうというので監督はウォルフガング・ペーターゼンが担当している。

この映画は『ダイ・ハード』の亜流作品というよりは大統領ポルノという側面が目立つ。大統領カッコよくて気持ちいい~みたいなある種のポルノ映画だ。テロに屈しない強い大統領のイメージでテロリストを次々蹴散らして決断力もあるし人望もあるし親しみもあるし家族思いだしと、どんだけ大統領に幻想持ってるんだというファンタジー大統領になっており、さすがにやりすぎで鼻白みそうだが、98年の日本の映画興行収入ランキング9位、97年の全米と世界の興収ランキング5位とヒットしている。大統領ポルノとして気持ちいいシーンは劇中にいくつかある、周りの人が大統領のために身をささげて犠牲になるシーンだろう。

脚本は褒められたものではない。勘でケーブル切るなど雑な展開が出てくる。最後付け足したようにエアフォース・ワンが墜落するかどうかをやっているのも酷い。つーか最後は隊員がパラシュートいくつか持ち込んで脱出とかじゃだめだったのかな。テロには屈せずというので他人が殺されるのはよくて、いざ自分の家族が殺されそうになったら従っているのはダメだろう。テロに屈しないが、それでもなんとしても人質を殺させはしないというのでやればよかったのに。人質殺されようがテロに屈しない強い大統領というので欲しがり過ぎた。
定期的にゲイリー・オールドマンの一人舞台タイムがやってくるのでテンポがいいわけではないし、最後に付け足しのサスペンスを挿入している時点でソリッドさとはかけ離れた映画という印象を持つ。当時の技術的に仕方ないのかもしれないが、エアフォース・ワン墜落のCGが、飛行機の教習所とかで流れてそうなヘニャヘニャCGなのも残念だ。

『ダイ・ハード』のエピゴーネン映画はいくつかあり、それらを観ていると比較対象ができてしまうのでこの映画の緩さが気になる。セガールのやつはもっとドライな映画だったし、『エグゼクティブ・デシジョン』はもっとソリッドだったし、そもそも『ダイ・ハード』と比べるとサスペンスの高め方に雲泥の差がある。敵側が早い段階で誰かが下の貨物室にいることに気付いて話が進むのは緊張感が高まらない。
超人かみたいな大統領設定や大統領無双みたいなのは楽しいが、大統領ポルノになっているのがノイズだ。『ダイ・ハード』的な骨組みにいらんものをゴチャゴチャ付け足し過ぎた結果だろう。『ダイ・ハード』亜流作品にはソリッドさとドライさが大事に思う。
三樹夫

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