メザシのユージ

泥の河のメザシのユージのレビュー・感想・評価

泥の河(1981年製作の映画)
3.0
河口の食堂に住む少年と対岸に繋がれた船で売春を営む母を持つ姉弟との出会いと別れを軸に、社会の底辺で生きる人々の姿をきめ細やかに描いた人間ドラマ。日本が高度成長期を迎えようとしていた昭和31年。大阪・安治川の河口で食堂を営む板倉晋平の息子・信雄は、ある日、対岸に繋がれているみすぼらしい船に住む姉弟と知り合う。その船には夜近づいちゃいけないと父からは言われていた……。
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昭和31年、11年前に戦争が終わったとはいえ、まだ人々の心には戦争の傷跡が残っていた時代。満州から生きて帰って来ても「カスのようにしかいきられない」と語る主人公の父親。

主人公の友達の母親(加賀まりこ)は船で暮らしながら売春を生業にしていた。主人公の友達がカニに火をつけるのは、子供なりに感じている閉塞感を紛らわせたかったのだろう。

大人の事情に翻弄それる子供たち。余裕があるように大人達も、必死に何かを隠して生きている。それは心の奥底の本心であったり過去の後悔であったり。