訳あって急に見たくなったドイツの初期トーキーコメディ。
印象的な歌があるということだったからてっきりミュージカルだと思っていたらそこまで歌が無かったのには肩透かしを食らったが、その分当時のルノワール(特にラ・マルセイエーズ)的で中々見事な演出の数々が拝めたのは思わぬ収穫で楽しかった。
特に行軍のシーンや花束を爆弾と間違えて混乱が起こるシーン等人々が良い具合に動く箇所は見ていて実に楽しかったが、人間がわちゃわちゃ自然現象のように動く描写ってのに自分は惹かれる傾向にあるのかなと改めて思った。
時折挿入されるミュージカルシーンも、長回しが際立つ映像はさながらマックス・オフュルスのようでこれまた素晴らしく、音を有効活用しつつも映像を面白くすることに力を注ぐのも忘れないこういう演出を見るとやはり快い気分になる。
名前は知っていたものの何故かこれまで敬遠していたが、トーキー初期のドイツ映画として今尚DVDが容易に鑑賞できるのも納得の秀逸な作品だった。