このレビューはネタバレを含みます
ネグレクトでコミュ障にさせられた男がもがき続ける哀しい物語。
この映画はコメディーではありません。
パッケージが煽るようなサイコスリラーでもありません。
ましてやジム・キャリーの顔芸映画ではありません。
ヒューマンドラマです。
確かにコメディータッチで撮られてはいますが、そうでなければ悲しすぎて観ていられません。
人との距離感が分からないイタイ人はどこにでもいます。時と場合によっては自分もそうかもしれません。
それでも精一杯ヒトと関わろうとする姿、友人を作ろうとする姿を誰が笑えましょう。うっかり何度か笑ってしまいましたが。
ジム・キャリーはこの後「トゥルーマン・ショー」で爽やかな感動を与えましたが、その萌芽はすでにこの映画で現れています。むしろリアリティという意味ではこの映画の方が勝っているともいえます。
迷惑な変人につきまとわれるというテーマは古くからあったと思いますが、その行動原理が明確に示され、のみならず共感させうる演出に成功した映画は数少ないのではないでしょうか。
ケーブルガイは迷惑な奴ですが、純粋でした。芝居がかった顔芸も、彼の生い立ちからすれば必然かもしれません。彼が人と交わる引き出しは、オーバーな演出に装飾されたテレビ番組の中にしかなかったのですから。
この映画は、「MASK」の「ジム・キャリー」というイメージがかえって足を引っ張ってしまったのかもしれません。
SNSその他インターネットの発展でリアルな人との関わりが薄れゆく現代の人にこそ観て頂きたい良作だと思いました。