2024年177本目
死んだはずの人との再会
『罪の声』の土井裕泰監督の劇場長編デビュー作
梅雨が訪れたある日、「雨の季節に戻ってくる」と絵本に書き残して病死した妻・澪が、夫・巧と子・佑司の前に現れる。記憶をなくしていた澪を巧と佑司は迎え入れ、絆を取り戻していくが、雨の季節の終わりと共に澪は姿を消し…。
市川拓司によるベストセラーファンタジー恋愛小説を、『メタモルフォーゼの縁側』の岡田惠和が脚色。
原作は、2005年にはミムラ&成宮寛貴主演でテレビドラマ化、2018年には韓国でリメイクされている名作。2005年にハリウッド映画関係者向けの試写が行われた際、その場に出席していたジェニファー・ガーナーが感銘を受け、ワーナー・ブラザースにリメイク化を直談判、そのまま企画が通り、後にハリウッドでのリメイクが決定したらしいが、残念ながら頓挫してしまったみたい。
『大空港2013』の竹内結子&『ピンポン』の中村獅童が主演し、『丹下左膳 万両の壺』の武井証、『ALWAYS続・三丁目の夕日』の浅利陽介、『シン・ゴジラ』の市川実日子、『ザ・マジックアワー』の小日向文世らが共演。
主題歌は、ORANGE RANGEの”花”。
また会いに来て欲しい竹内結子さんがヒロインってだけでも切ないし、その夫役が中村獅童さんなので、2024年のいま本作を見てしまうと現実と虚構が交錯してあれやこれや考えてしまうのだが、2人の演技は見事であり、家族の絆と夫婦の愛がストレートに響く感動作だ。
澪と巧が昔の思い出を確かめ合うように再び恋に落ちていく様子はとてもロマンティック。彼らの純愛っぷりを余すことなく表現する両者の視点からの回想の交え方が巧みであり、「いま、会いにゆきます」という言葉の意味が明かされる展開はとても心地よい。
3人が再び共に過ごせた期間は決して長くはなかったが、彼らにとって気持ちを整理するための大事な時間であったことは間違いない。自分もこんな家族を築きたい、限りある人生だからこそ一瞬一瞬を大切に生きたいと思わせてくれる。
家族を優しく包み込む幻想的な世界観も魅力的で、透明感のある竹内結子さんと「雨」の風景は相性抜群だった。