【不条理日記】
マーティン・スコセッシのファンである私が観ても、このちっとも笑えない寒い応酬の繰り返しはキツかった。ニューヨークの狂気を描いた『タクシードライバー』とは180°アプローチの違う作品。
いわゆる悪夢的光景の【ループもの】なのだが、大島渚やファスビンダー、ルイス・ブニュエル的な不条理世界とはぜんぜん違う軽薄なノリで同じようなシチュエーションの反復ばかりで飽きてくる。
こういう題材は不慣れなのか知らないが、映画の世界にちっとも入り込めない。
取り敢えず主演のグリフィン・ダンは腑抜けっぽくて良かった。ミヒャエル・バルハウスの撮影も人工的で80年代的な雰囲気がある。ラストで上手く纏まってはいるが、どうも違和感の付き纏う演出なのが玉に瑕。
自分は悪評を買った『ギャング・オブ・ニューヨーク』や『救命士』の方に思い入れがあるので、こういう軽々しいノリのコメディはスコセッシには撮って欲しくないと思った。惰性で撮ってるのか、やる気を感じられない。