ドイツの鬼才ヴェルナー・ヘルツォーク監督作。「フィツカラルド」に続いて本作を鑑賞。
レンタルディスクがHDリマスター版で映像が美しいのと16世紀のスペインの探検隊の実話をベースにした時代物なので今見ても違和感無し。
ただ、個人的には先に鑑賞した「フィツカラルド」で、今の映画界では絶対実現不可能な、色んな意味でもの凄い映像体験をさせて貰ったので、それより10年も前に製作された本作については、少々物足りなさを感じた。
アンデス山脈やアマゾン川で敢行したロケの映像も、大自然の描かれ方、現地エキストラの数の少なさ等、どうしても「フィツカラルド」と比較すると見劣りしてしまう。原住民の攻撃を受けたり首狩り族の縄張りに足を踏み入れても当の彼らの姿は全く描かれないのは演出というよりも製作費の影響だと思われる。
監督のフィルモグラフィーを調べると本作はデビューしてまだ間もない作品である事が分かった。本作で初めて世界的評価を受けた訳なので、そりゃあ出資者も限られたのも仕方ない。
それでも、要所要所で監督の拘りを感じる印象的なシーンも多く、激流の中で立ち往生する筏、探検隊員やインディオたちの薄汚れた衣装・メイクとは対照的に鬱蒼としたジャングルの中では不自然なほど美しく着飾った貴婦人たち・・。
ネズミ、豚、馬、蝶、そして余りにも象徴的なサルの群れなど、この頃から“生き物”を効果的に使う監督だったんだなあと認識。
中盤、筏に乗った者たちが大木の上に見る“あれ”こそが、その後の「フィツカラルド」製作に繋がったのかなあと勝手に想像するのも楽しい。
「フィツカラルド」では余りに特徴的な容貌ゆえ、役どころにしっくりこなかった印象があるクラウス・キンスキー。本作では、主役とはなっているものの、中盤までは彼を中心にした物語構成になっていないし、終盤に向けての狂気に駆られ蛮行に走るキャラクター像にはピッタリ当てはまる。
彼が演じるタイトルロールのアギーレが大きな剣を振りかざした後のあの強烈な描写はこの時代の映画の残酷シーンとしては相当ショッキングなもの。
ラストシーンはまるで絵画のように完璧。
たまたま鑑賞した二作品がそうだったのかもしれないが、ヘルツォーク監督は何故にここまで南米を舞台にした冒険譚に惹かれたんだろう?
機会があれば、これこそクラウス・キンスキーのイメージぴったりと言った感がある「ノスフェラトゥ」にも挑戦してみるかな。