イスケ

風が吹くままのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

風が吹くまま(1999年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

この村にWi-Fiがあったなら、あんな展開もこんな展開もなく、クズはクズのまま村を去っていったことだろう。

お医者さんとのニケツのシーンが素晴らしい。

「一本の木だらけだ」と、目印の木に毒づきまくる冒頭とは大違いでさw (笑ったけど)



生と死について、哲学的に考える機会を与えられたような感覚。

でも、自分の中に残ったのはシンプルで、
「自然体で今を生きていきたい」という気持ちだけかも。

村人も、向かいの妊婦も、牛も羊も亀もフンコロガシも、みんな今目の前のことだけに向き合っている中で、
テレビクルー(というかベーザード)だけが目の前のことではないことに追い回されてる。

ベーザードは、どんな環境にいても全ての上司の電話に出ようとするのが律儀ではあるんだけどw、村の中でバタバタと走り回ってるの彼だけ。
それが生きてるようで生きていない人間の滑稽な姿として映るというね。


一方で、村人の生活は同じことの繰り返しのようで、毎日に少しずつ変化がある。
テストができるようになったり、子供を産んだり、夫婦喧嘩をしたり。

都会になればなるほどダイナミックな変化を起こせる反面、
虚構や見栄にまみれたり、未来のスケジュールやマルチタスクに気を取られたりして、どんどん足元に咲いている花に気づかなくなっていく。

この村の因習に疑問を持つ先生もいるわけで、どちらが良いという単純な話ではないけれど、もっと目の前のことを大切にする意識を持ちたいという気持ちにさせられたのは確か。


同じような観点で、
序盤にファザード少年が学校の行き方が2通りあると言ったシーンが、後から考えると凄く良いなぁと思えてきたりもして。

自分に置き換えて考えてみると、
地元で裏道を駆使したり、地元民しか知らない店を知ってる感覚に近いような気がしていて、
よく分からんキラキラパーティで自称すごい人と知り合いになるより、よっぽど中身も価値もあると思うんですよね。

そんな飛躍したことまで考えた。



ベーザードは最終的に心の変化を得たものの、なかなかのクズで見てる分には面白かった。

スタッフに「いつまで待つんすか」とキレられた時に、

「あと3日が勝負だ」

みたいなクソテキトーなことを言ってたのは大笑いしたわw
お前コントロールできんのかいとww


ずっと骨を持っていたのは、お婆さんの「死」を自身が握っているようなメタファーだったんだろうと、ラストシーンで理解しました。

投げ捨てた骨が、川の流れのままに身を委ねている様子は、

「生も死も自然のままに」

ということを理解した表れなのでしょうね。


……なんて言ってはみたものの、

「良い知らせ(婆さんの死)があるまでここには来るな。」

と、ファザード少年に言ってみたり、
頻繁にセクハラめいた言葉が出たことを帳消しにはできてないけどな。

「工場はまだ生産を続けられそう?」

ウィットに富んだ言い回しのようにセクハラする奴が一番キモいということは分かった。


ファザード少年が車に乗らなかったのは拍手。
イスケ

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