昼行灯

雪之丞変化 第一篇の昼行灯のレビュー・感想・評価

雪之丞変化 第一篇(1935年製作の映画)
4.0
女賊伏見直江姉御🫶おきゃんな口調がかわいい、ヴァンプものまだまだ全然見てなくて分からないけど、こんなに行動する女性キャラいた??って感じ。たしかにチラリズムとしての身体の露出はあったけども、現代の感覚からしたら別にエロい印象はない。かといってすごい剣戟がある訳でもなく、今回は台詞回しの流麗さが光っていたと思う。1人でべらべら喋ってるのに、(笑)状態にならない。口達者なのに驚きや笑みなど感情表現が豊かで、カメラもそれを生かすよう正面からのクローズアップを多用している。忠次旅日記のときと同一人物には思えなかった。最後あっけないのがちょっと残念🥺

本来三部作のやつの総集編だから急に話が飛んだりして分かりづらいところもあったけど、ナレーションの口上がうますぎて原作知らんくても物語がすっと入ってくる。活動弁士とかこんな感じだったのかな。90分すぐ終わってしまったのでフィルムが発掘されたらな~という期待。

冒頭本番前雪之丞の見る父母の幻影の表現が前衛的でびっくりした。渦巻きのオーバーラップでめまいのような効果があるのはもちろん、母と雪之丞を演じているのが同一人物なのだからそこにより倒錯を見いだせるのです。というか義賊闇の助も長谷川一夫なのがすごくて、顔の骨格からして違うように思えた。闇の助と雪之丞が同一画面にいるシーンもあり、モンタージュだけで1人3役問題を回避しないぞという気概がやばい。

もっとすごいなと思うのが、七変化のレベルが複数層あるということ。長谷川一夫が三役に七変化しているという演技のレベル、雪之丞自身が七変化するという登場人物のペルソナのレベル、舞台上と舞台裏で表と裏の顔を使い分けるという劇中劇の周縁における七変化のレベル。
特に、クライマックスの奈落の底で敵を討つシーンで舞台衣装を着た雪之丞が敵を討ち、そのまま舞台装置によって上昇して演技を始める演出は圧巻だった。しかもこの舞台衣装が怒り顔のような隈取りで、舞台と舞台裏の物語が連続しているように思わせるアイデアよ。

オーバーラップはなんとなくアベルガンスら辺のフランス印象主義の影響がありそうだなと思ったし、BGMで洋楽を入れる時代劇というのも伊丹万三とどっちが早いだろうって感じだった
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