浅野公喜

E.T.の浅野公喜のレビュー・感想・評価

E.T.(1982年製作の映画)
3.9
言わずと知れたスピルバーグ監督の超有名作。子供の頃なんとなく観た記憶が有りますがフルでちゃんと観るのは今回が初めてで、やっぱり傑作でした。

父親が不在の家庭という設定は、主人公のエリオットが親元を離れたE.T.に対する父性が目覚めるきっかけとしてもっと濃く描けた気がしないでもないですし、防備服の科学者達もいきなり家に入って来るか?という疑問も。

しかしそんなのは些細なことで、痛みといった感覚を共有することで他者の気持ちを汲めるようになり別れも有ったことで成長、そして彼だけでなく他の兄妹も言葉を教えたりE.T.を探したりと役割が与えられ、最後にはE.T.の存在に案外気付かなかった(=多忙故の軽度のネグレクトが原因?)母親、兄友達も協力しE.T.を送り出す流れは見事で、映画史に残る自転車で飛ぶシーンは2度も有るうえに手垢がついた印象だったのに実際はジェットコースターに乗った時の浮遊感&ジョン・ウィリアムスのBGMによる興奮と感動が一気にやってきて思わず涙腺が緩んでしまいました。

「サスペリアPART2」のあの人形も作ったカルロ・ランバルディによるE.T.のビジュアルもポイントで、内面を見て愛そうというメッセージを伝えるにはあのキモカワな絶妙なビジュアルは相応しかったと思います。たまに猫のようなゴロゴロ音も聞けますが、あれもちょっとした癒しに。

また、この前観た「フラッシュダンス」にも感じたことですがライティングも印象的で、夕方や夜の屋外も美しいですが屋内では光は外から差し込むものがメインで非常に神秘的。序盤のE.T.を物置小屋で発見する際のエリオットの顔真ん中に光が当たっているのも「得体の知れないものを覗いている」感覚に誘う事に成功している気がします。アングルではカエルの授業で教師の顔が一切映らない所が子供の視点を大事にしているスピルバーグ監督の工夫にも感じました。

「アナベル」シリーズでお馴染みのアナベル人形が時々映っているのは有名なんでしょうか。余談ながらエリオット演じたヘンリー・トーマスが今作後に出演した「ビデオゲームを探せ!」、「クエスト/伝説の冒険」はVHSのみですがどちらも面白そうです。
浅野公喜

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