三樹夫

マンディンゴの三樹夫のレビュー・感想・評価

マンディンゴ(1975年製作の映画)
3.0
南部の黒人奴隷の実体が赤裸々に描かれている本作。セリフの節々からなにから観ていて嫌になる描写のオンパレードだが、どこかエクスプロイテーション要素があるくないと思ったが、プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスは原作がヒットしたから単に金になるだろうというので製作したらしい。しかし監督はリチャード・フライシャーで、皆が目を背けていることをちゃんと描くという信念をもって撮ったためとんでもなく強烈な映画となった。

やっていることが酷すぎてもはやブラックコメディみたいになっている。黒人の腹に足を乗せたらリウマチを吸い取ってくれるというトンデモ民間療法により、黒人の少年がずっと足置き台にされている画はシュール過ぎた。白人が揃いも揃ってクズでバカで、バーホーベンの映画に似通ったようなブラックさと滑稽さがある。ハモンドは黒人と分かり合えるかもというキャラ設定で描かれているが、他の人間より比較的マシなだけで十分こいつも酷い。

アフリカから奴隷の輸入を禁止されているため、奴隷の黒人に子供を産ませて、子供を売って金を得るという人間農場がこの映画の舞台となっている。封印作品扱いだったこの映画を引き上げたのがタラちゃんで、後に『ジャンゴ 繋がれざる者』に引き継がれている。さすがにレイプ描写はやりたくなかったらしく、この映画からレイプ描写をマイナスして、そこに自身は黒人でありながら心は白人の側に加担する黒人という要素を拡大させ、奴隷頭のサミュエル・L・ジャクソンをプラスしたのが『ジャンゴ 繋がれざる者』の後半だ。
劇中なぜこれ程まで酷いことが出来るかというと、黒人を人間としていないためだ。人を人間として見ないということにより、誰であってもいとも簡単にこの映画のような行いをするということを肝に銘じておかなければいけないだろう。
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