タマル

マンディンゴのタマルのレビュー・感想・評価

マンディンゴ(1975年製作の映画)
5.0
監督……っ! 映画が観たいですっ!
以下、レビュー。

色々ありまして映画自体を久々の鑑賞。せっかくならということで『今年一番観たい映画』こと今作を選んでみました。

南北戦争以前の南部。
当然のように奴隷制が根付き、黒人は獣として扱われていました。
舞台はそんな南部ルイジアナ州のある牧場。その牧場が扱う動物は牛や豚ではなく「人間」。黒人同士を交配させ、できた子供を家畜として売り払うことで生計を立てているのでした。もちろん自分のタネで出来た子供も肌が黒ければ商品です。そのため、黒人女性は想像を絶する扱いを受けていました。
昼はサトウキビ畑。夜は性処理。
まさに家畜の立場を強いられていました。黒人達の生き地獄が南部に展開されていたわけです。

まぁ、そんなことはともかくとして、この映画の主人公、牧場主の息子ハモンド君には悩みがありました。彼は足に障害があるというコンプレックスがあるのに、無神経な周囲は彼を気遣ってくれないのです。
かわいそうなハモンド君。
パパは厳しいし、奴隷どもは頭が悪すぎて真面目な話などとても出来ません。彼は孤独です。孤独で、すごーく辛いのです。
あぁ、僕はこの世で一番不幸な人間に違いない!

そんなハモンド君に転機が訪れます。彼のコンプレックスを慮ってくれる女性と出会えたのです。
やった!!!

彼女は黒人だけど、別に構いません。彼女だけは特別なのです。他の奴隷どもとはわけが違います!!
もちろん彼女との間に生まれた子供は売りません。子供が成人したら奴隷から解放してやるつもりです。何せ愛しい我が子なのですからね。彼女にはプレゼントも贈ります。とても綺麗なルビーの耳飾りをあげました。高価ですよ?でも、愛しているのだから当然ですよね。

えっ?強制労働?
それは黒人が「するべき」仕事だからしてもらいますよ。当然です。 当然ですよね??


ハモンド君は黒人女性のエレンと「恋仲」となり、心で通じ合えた(よう)です。そうハモンド君が信じる限りはそれが真実です。
しかし、すべからく人間とは仲が深まれば深まるほど他者との関係に横たわる問題点が浮き彫りになってしまうものです。ハモンド君もそのことには薄々気づいているはずですが、彼は目を背けてしまいました。

私達はハモンド君を他人として見るべきではありません。彼の欺瞞を非難すべきではありません。
なぜなら、私達は間違いなく彼を心に住まわしているからです。
彼を自分の一部として捉え直した時、この映画は真に意義深いものとなるのではないでしょうか。
オススメです。
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