明石です

空の大怪獣 ラドンの明石ですのレビュー・感想・評価

空の大怪獣 ラドン(1956年製作の映画)
4.4
阿蘇の炭鉱内で、鋭利な刃物で首をちょん切られた遺体が発見される。なんと巨大な生物の幼虫の仕業で、水爆実験が2億年前の怪獣ラドンを蘇らせていた!初代『ゴジラ』でハリウッドに格の違いを見せつけた本多猪四郎監督の次作にあたる怪獣特撮映画。ゴジラ、モスラと並ぶ東宝三大怪獣の一匹の初お目見え作品。

本題のモンスターがまさかの幼虫の姿で登場し、人間を殺しながら成長、後半でようやくラドンに進化するという、シンゴジラの原点ここにあり!な流れ。進化した後は、音速より速い最強の飛行術を駆使してフィリピンや中国で被害を出し、そして九州に凱旋。羽ばたきによる衝撃波「ソニックブーム」で山をも崩してしまうラドンとの空中戦や、市街地を舞台とした殲滅戦、故郷阿蘇に帰っての最終戦、どれも手に汗握る、、

しかし1950年代という時代に、着ぐるみを着て地上を暴れ回るモンスターならいざ知らず、空を飛ぶ大怪獣をスクリーンの上に出現させられるなんて、誰に予想できたでしょうか。まあよく見ると戦闘機が飛行中に静止しているなど、ストップモーション・アニメーションではハリウッドに遅れを取っていたり、またラドンの背中に糸が見えてたりするのだけど、これが記念すべき一作目目と考えると十分すごい。なんならその微妙に見えてる糸は、アナログフィルムは撮り終えた映像のうえに後から何かを足したり消したりするのが難しい中でこれだけのモノを作れたことの証でもある。

街のミニチュアは、カラーになったことで、リアルさという点では初代『ゴジラ』や『ゴジラの逆襲』に一歩劣る。しかし破壊され出すと凄いんです。ゴジラ大好き男トビー・フーパーがやりたくてたまらなかった街破壊のミニチュア特撮、彼が真似する30年前も前ですからね。またラドンの造形は素晴らしくリアルで、羽ばたきも本当に生の恐竜のそれにしか見えないし、空中での戦いはゴジラ以上に大変だっただろうなと想像する。そして阿蘇の溶岩でケリをつけるラストも、ミニチュア特撮のクオリティが高すぎるんじゃ。世界に冠たる日本の技術力を大いに堪能させていただいた。

ついでと言ってはなんだけど、復興直後の九州の街並みに感じ入った。キリスト教会の尖塔以上に高い建物がなく山まで見渡せる佐世保駅周辺の景色は巻き戻して二度見するくらい好きだし、またラドンの出生地こと阿蘇の山麓の風景は息を呑む美しさでした。山あいに家が並ぶ超ルーラルな景色は、そのまま八つ墓村や丑三つの村のセットになっててもおかしくなさそうな香ばしい時代性を感じる。この時点ではこれが東宝の怪獣映画がカラー化された一番の良さかもしれない笑。
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