砂

空の大怪獣 ラドンの砂のレビュー・感想・評価

空の大怪獣 ラドン(1956年製作の映画)
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huluにて鑑賞。
ゴジラシリーズに登場する怪獣、ラドン。単体での映画があったことを実は知らなかった。本多猪四郎が監督を務める本作は、初代ゴジラにも通じたテーマを持った特撮映画だ。

熊本・阿蘇の炭鉱街で謎の殺人事件が発生する。些細な諍いから嫌疑を持たれ消息を不明となった男の妹が葛藤する様など、かつての特撮が持っていた人間ドラマを中心とした展開が序盤になされる。今ではスケールアップもあり犠牲者の家族やコミュニティをリアルに描写することはあまり観られない。ここまでは人間のスケールで物語が描かれ、空間的に閉鎖的な坑道で探索する様はホラー映画さながらだ。

そこから怪虫の出現によって怪獣映画へと変貌していく。警官なども惨殺されるが、こちらは特に嘆かれる様子もあまりなく、民間人との違いがはっきりしている。あれよあれよという間に自衛隊まで登場し、怪虫を追い詰めていく。そのころ、福岡へ向かう謎の飛行物体が発見される。また北京・マニラ・沖縄でも謎の飛行物体が出現し、大きな被害を与える。
それがラドンであり、ここからはラドン討伐へと物語が進んでいく。

ラドン発生の因果が水爆実験であることや、怪虫メガヌロンの発生もそれによる地盤変動であることなどは初代ゴジラと似ている。
飛ぶだけで圧倒的な衝撃波を発生させ、通り過ぎると災禍を残すラドンは台風・ハリケーンのメタファーだろう。
本作においては、通常兵器では歯が立たなかったラドンを撲滅する方法は自然の力であった。これもまた、市民の生活を奪うことも止む無しの方法によってなされる。自然を利用するのも科学であり、人間なのである。ラストシーンにおいては少し突き放したような、無常な印象を残す(阿蘇が大噴火したらあんなもんじゃすまないと思うのだが)


私は福岡県民なので、映画の感想として必然的に記録的側面への興味が強かった。
1950年代の福岡・阿蘇・佐世保を観ることができたという資料的な感動や、新天町がぶっ壊されてる…という妙な感覚。スペースゴジラの時代に再びぶっ壊されるので、特撮世界においては非常に危険な街だ。
阿蘇に炭鉱があったことを知らなかった…と思ったら映画による色付け設定だったらしい。

細かいところで気になることは多いが、特撮シーンも時代を考慮するとすごいし、いい映画であった。
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