風の旅人

ドライヴの風の旅人のレビュー・感想・評価

ドライヴ(2011年製作の映画)
4.5
ピンクのフォントで表示されたクレジットタイトルが鮮やかにオープニングを飾る。
しかし物語はそこから想像されるような甘美なものではなく、暴力的で悲哀に満ちている。
静と動、緩急の変化が絶妙で、100km/h代のカーブと160km/h代のストレートを投げ分けるような演出が際立つ。
ニコラス・ウィンディング・レフン監督の天性の色彩感覚、センス溢れる音楽の使い方に魅了される。

表向きは自動車の修理工場で働き、時折スタントマンのバイトをしているドライバー(ライアン・ゴズリング)は、裏稼業として強盗の「逃がし屋」をしている。
ある日ドライバーはアパートの同じ階に住む人妻アイリーン(キャリー・マリガン)と恋に落ちる。
しかし服役していた夫が釈放され、二人の幸せな日々は終わりを告げる。

ライアン・ゴズリングの寡黙で多くを語らず、表情と背中で語る演技が魅惑的で、彼の微笑みとキャリー・マリガンの哀しげで幸薄そうな顔が印象に残った。
終盤のエレベーターで刺客と鉢合わせし、ドライバーがアイリーンに口づけした後、銃を取り出そうとする刺客を痛めつける展開が白眉で(ラブ・ストーリーと暴力の共存)、エレベーターのドアを隔てて立つドライバーとアイリーンの姿に、二人が住む世界の違いを感じた。
「サソリ」のスカジャンを着た男は、愛する女性との暮らしを夢見たが、結局彼は「サソリ」である宿命から逃れられなかった。
醜くも美しい愛の物語。
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