れもん

ドラえもん のび太とふしぎ風使いのれもんのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

2003年公開の『ドラえもん』の映画シリーズ24作目。
制作方式がセル画からデジタル彩色へ完全移行しデジタル化した最初の作品。
ちなみに、『クレヨンしんちゃん』『それいけ!アンパンマン』『名探偵コナン』の映画シリーズもこの年公開の作品からデジタル化したらしい。

これまで公開順にこのシリーズを追ってきたが、21〜23作目が3作連続で微妙な出来の作品だったので今作もあまり期待せずに鑑賞したけど…
突然のクオリティアップに嬉しい困惑。笑

まず、キャラクターのビジュアルやデザインが突然垢抜けてびっくり。
前述のとおり制作方式がデジタル化したというのもあるだろうけど、総作画監督が2〜23作目を担当していた富永貞義から渡辺歩へ交代したのが大きいのかも。
フー子が入るぬいぐるみのデザインはとても可愛くてグッズとして売っていたら買って飾りたいくらい。

また、ストーリーも単調すぎず大雑把すぎず説教臭すぎずで面白かった。
フー子が最期に頑張るシーンなんて、子供の頃に観たら思わず泣いてしまったかも。
のび太が遭難しそうになりながらフー子を守ろうと頑張る姿も、ジャイアンがスネ夫のために一人で敵地へ潜入したりスネ夫を元に戻そうと頑張る姿も、素直に応援したくなった。
ドラえもんとしずかの活躍は少なめだったし、スネ夫に至っては活躍するどころではなかったけども。

台風が通過するシーンでのび太の家→しずかの家→スネ夫の家→ジャイアンの家の様子が映されるのも良いし、台風のニュースが流れるシーンで新聞を読みながらテレビを観るのび太のママ→アイロン掛けをしながらテレビを観るしずかのママ→ティータイムを楽しみながらテレビを観るスネ夫のママ→店番をしながらテレビを観るジャイアンの母ちゃんが映されるのも良い。
スネ夫のママだけやたら優雅なのが好き。笑
母親たちが日常を過ごしている間に子供たちが地球を救っているという対比にもなっているし、フー子が守ったのはこういう日常風景なんだと思える。

ただ、気になる部分もいくつかあった。
例えば、序盤のスネ夫はフー子を家来にしようとして追いかけ回すのだが、中盤以降敵に身体を乗っ取られて悪事を働かされる彼はただでさえ損な役回りなので、せめて家来ではなくてペットにしようとするくらいに留めておいてほしかった。
今作のスネ夫は敵に乗っ取られる前から悪役ポジションで、ストーリーのために性格を歪められている感じすらした。
また、「風を利用する風の民」と「風を支配しようとする嵐族」ではそこまで両者間に理念の違いを感じないので、「風と共存しようとする風の民」みたいな言い回しのほうがいいんじゃないかとも思った。
リアリティを出すために、風の民や嵐族がどうして外界と隔絶されているのかの説明もチラッと入れておいてほしかったかな。

それでも、総合的に見ればシリーズの中でもかなり良い出来の作品だったと思う。

【2022.08.12.鑑賞】
【2022.08.13.レビュー編集】
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