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見えない恐怖のzhenli13のレビュー・感想・評価

見えない恐怖(1971年製作の映画)
4.2
映画の醍醐味にあふれている。「何を撮るか」よりも「どう撮るか」だよなーとしみじみ思う。この短さといい、予算も特別な脚本も道具もない中で作り手が手腕を振るうB級ノワールの見本のような、それが70年代に再現されたかのような作品。説明的な台詞をできるだけ排除して、画でみせてやろうという気概も感じる。

全盲になった女性役のミア・ファローが見えないようすを、私たち観客は見ている。地面ぎりぎりのカメラアングルにより、私たちも犯人の姿が見えない。でも「志村うしろー!」のように、私たちは犯人が迫っていることや背景で何かが起こっていることを見せられているので知っている。ミア・ファローは身近な人たちが殺されてそばで横たわってることも知らない。ミア・ファローだけでなく、登場する人物たちはそれぞれの場で見えることしか知らない。
「見える/見えない」こと、「知っている/知らない」ことをどう按配するかが、サスペンスの面白さなんだろう。この作品は脚本よりも、どう撮るかだけでそれらの面白さを決定づけている。さらには目の見えない人の挙動を凝視するというある意味失礼な行為を私たち観客がおこなっていることも含め、映画の外側にある観客もまた「見える/見えない」「知っている/知らない」の重層構造に巻き込まれていることに気づかされる。

水の中の主観ショットなんて実は彼女には見えていない視点を配してることにも唸る。『按摩と女』のラストショットみたい。そしてミア・ファローの演技がまたすごい。
バスタブのお湯を抜いたら外の排水口から血の混じったお湯が流れるショットを入れるのもすごいなと思う。

ラスト、え!?ともう一回最初に戻ってしまった。
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