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東京暮色のENDOのレビュー・感想・評価

東京暮色(1957年製作の映画)
4.0
とにかく不穏。冒頭粂子のお店で笠さんは春男と志摩半島で心中の話。節子と信欣三の夫婦は一度も同じ画面に収まらないほど冷え切った関係。外は雪。翻訳で食い繋ぐ欣三は『宗方姉妹』の冷たいインテリ山村聰と重なる。パチンコ屋で聰と会って、娘の借金を知るあの哀しい笠さんの横顔。堕胎後、その娘みっちゃんが廊下の奥から手前に迫ってくる。アテレコの声も含めホラー。そして正巳行きつけの食堂、珍々軒の立地。踏切前にある眼鏡の看板とdangerの警告は予兆。稲子が正巳から待ち合わせに指定されるétoileとかいうカフェにいる訳ありの人達が不明瞭にさざめき合う。壁にはデカいミッチャムのポスター。宮口精二の刑事にしょっ引かれた夜の署内。クィアな下着泥棒が登場し、節子の後ろに映り込む。雀荘にいるのは小津のタニマチ、菅原通済。堕胎を手伝う産婦人科医は三好栄子!すごいキャスティングだ。貞二が須賀さんと雀荘で妊娠の事をネタに小西得郎のモノマネしながら「なんとー、申しましょうかー」「ラージポンポン」と放言。許しがたい。その後二度と出てこない。正巳との訣別ビンタの裏に流れる「安里屋ユンタ」。今際の際に「死にたくない」。ボロクソに責められる母ベルさんは伸郎と室蘭へ。家の前の電柱に小便する犬。駅に見送りに来るわけない節子。でも欣三のいる家に戻らざるを得ない節子。音楽はいつも通りなのもすごい。ちょっとしか出てこないお節介な春子が物語を始動させます。
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