『赤い影』に続き、その一年前に公開されたニコラス・ローグ監督作を観賞。
存在すら全く知らなかった映画です。もちろん初見。
原題は“Walk about”。
“ウォーカバウト”とは、オーストラリアの原住民アボリジニの男子が16歳になると未開の地で1年間独力で狩りをして暮らす風習のことだとか。
しかし、この邦題はもう少しなんとかして欲しいですね。
前半はある事情からオーストラリアの砂漠に置き去りにされ迷子になったイギリス人の姉弟のサバイバルが描かれ、後半はこの姉弟と“Walk about”中のアボリジニの青年との交流が描かれます。
主人公の少女を演じるのはジェニー・アガター。
アガターと言えば『2300年未来への旅』『鷲は舞いおりた』『狼男アメリカン』あたりを思い出しますが、本作のアガターは当時まだ16歳。
裸のシーンも多いのに不思議とエロくなく(撮り方は多少エロいですが)、池で全裸で泳ぐシーンなんてまるで人間とは別の生きもの(イルカや人魚や妖精の類)のように見えます。
当時6歳の弟を演じたルシアン・ジョンの本名はリュック・ローグで監督の実子。
後に父親と同じく撮影監督となり、現在はプロデューサーとして活躍しているようです。
アボリジニの青年役のダンサーでもあるデビッド・グルピリルはアボリジニの俳優としては先駆的な存在で、この後『クロコダイル・ダンディー』『オーストラリア』など数多くの作品に出演しているようです。
途中、時を同じくしてオーストラリアの砂漠を移動する別のイギリス人たちも登場し、いつ少女たちと遭遇するのかと思っていたら結局最後までニアミスばかり。
言葉の通じないアボリジニと白人姉弟ですが、一緒に旅をするうちにまだ幼い弟の方がアボリジニの言葉を覚えて多少なりとも意思の疎通ができるようになるところは妙に納得。
一見文明人に見える英国人の方が先住民族よりもむしろ野蛮人なのではと思わせる皮肉。
アボリジニが獲物を狩るシーンはこの時代の作品ですから全て本物でしょうね。たぶん。
しかしそうだとしても、それがアボリジニにとっての自然ということなのだと思います。
音楽は『野生のエルザ』、007シリーズのジョン・バリー。