Denkishino

美しき冒険旅行のDenkishinoのレビュー・感想・評価

美しき冒険旅行(1971年製作の映画)
3.7
2018年、一発目。
原題 WALKABOUT。
放浪というような意味と、アボリジニーの通過儀礼として、英雄の足跡を辿るように何ヶ月も放浪する儀式が有るのだそうです。

開始から不穏で、これはまさか?と思ったら、割とその通りになって驚いた冒頭。そこから始まる姉弟の冒険譚は、大自然に呑まれそうで不安になりつつ、見守ることになります。しかしこれこそが、この映画の味わうべきところでしょう。ワンカットずつ美麗ではありますが、不思議なのは絵画的では無い事。これは説明しづらいのですが、写真的なカットであり、どちらかといえばドキュメンタリーな感じが強く、彼女の泳ぐシーンは少し違いますけれど、それぞれの大自然の映像に映画的な雰囲気をあまり感じなかったのは確かです。その険しい自然の日常と、非日常の姉弟の冒険が段々と混ざりあって行きます。しかし突然の銃声によって、それはまたバラバラの世界になってしまう。この映画、銃声が転換点なのか…笑 後半の彼の踊りは、初めて見た時の意味がわからない恐怖と、意味がなんとなくわかってしまったときの困惑とが、よく表現されていたように思います。その結末に驚きつつのラスト。このラストが映画をよく締めていて、あの彼女の視線が、何か置き去りにしてきたような、淡い気持ちをもたらしてくれます。ナレーションの文言も良いものでした。
数あるロードムービー、すこし異色かもしれませんが、主演のジェニー・アガターの代表作。弟役は監督の息子のようです。大作な感じはありませんが、なんとも不思議に切ない映画でした。
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