人類は人類を抹殺し生き続けている、その人類もいつかは滅びる。
現代人の愚かさと罪深さをまざまざと感じる。
オーストラリアの大自然の中で力強く生きる先住民〝アボリジニ〟の少年が、カンガルーを槍で突き刺し棒で脳天をぶち叩き内蔵を抉り出し肉をさばく。
これが残酷と思うなら現代人の奢りだろう。
現代人のやっている事の方がよっぽど不条理で醜く、残酷な事を平気な顔してやっている。
彼らは生きる為に動物を殺す。
現代人は金の為に動物を殺す。
このオーストラリアの大地はヨーロッパ白人至上主義時代のイギリス人によって、流罪植民地となり囚人の大地と化した。
およそ50000年前から住む先住民はイギリス人らに、ハンティングと称され遊び半分で大量虐殺されたり川に毒を流され殺されてきた。
残った先住民は人間扱いされず動物以下の過酷な生活を余儀なくされた。
この映画が公開されたのは1971年だが、オーストラリア国家で先住民〝アボリジニ〟の市民権が認められたのは1967年で映画製作中の成立。
そんな背景もあって作られた映画だろうが、1つの民族を抹殺する現代人は今も根本的には何も変わっていない。
そんな歴史的経緯を先住民の少年が知ってか知らずか、現代人の少女と少年を当たり前のように手助けする姿は微笑ましくも痛ましい。
これを〝美しい冒険旅行〟と現代人の視点から見て思ってしまう事に疑問符が付く。
『アラビアのロレンス』や『華氏451』を撮影担当した監督〝ニコラス・ローグ〟らしく、灼熱の乾いた砂漠と踊り狂う炎の使い方が上手く表現されている。
監督した『地球に落ちて来た男』の奇妙で不思議な世界のように、現代人の少女と少年が先住民と遭遇し異星人との接触を体験したような感覚にさせる。
ナショナルジオグラフィックや野生の王国に物語を加えたような印象もあるが、個人的には苦手な虫だけは観ていて耐えられない。
予備知識なしで観賞し勝手に楽しいほんわかした映画だと思ったていたのは大間違いで、色んな意味で衝撃な映画だった..★,