Yutaka

ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間のYutakaのレビュー・感想・評価

3.7
アメリカ史を語るにも、アメリカのポピュラーミュージックを語るにも避けて通れない伝説のフェス、ウッドストックフェスティバル1969。ジミヘンやザ・フー、スライやジャニスなどといった面子が一堂に会した。
「平和と愛と音楽の3日間」というテーマを掲げてニューヨーク州ベセルの農場に40万人もの観客が集まった伝説のフェスだ。しかし、衛生設備は十分ではなく、途中からバリケードは破られて実質フリーフェスとなって経済的には赤字となった。
では、何故このフェスが語り継がれているのか。1969年のアメリカといえば、ベトナム反戦運動や公民権運動が繰り広げられていて混乱状態にあった。
そんな状況の中、カウンターカルチャーとしてラブアンドピースを掲げるヒッピーというムーブメントが登場する。彼らは、愛やドラッグ、音楽という快楽で米軍という巨大な軍事力、ベトナム戦争に対抗しようとした。ウッドストックフェスティバルはそんはヒッピーカルチャーの頂点に位置するようなイベントだ。
若者たちはこの3日間、フリーセックス、ドラッグ、音楽に明け暮れた。ふと現実に戻ると戦争という二文字が刻まれ、資本主義社会が腰を据えている。彼らは、そんな現実に対抗してひたすらに己の快楽を追求した。
古き良きアメリカの思想が垣間見える。現代は個人が国家に根ざしすぎていると思う。COVID-19のパンデミックという暗い現実がのしかかっている今、個人としての快楽をもっと重視すべきではないだろうか。
ジミヘンのパフォーマンスだけでも是非見て欲しい。ナショナルアンセムを狂ったようなフィードバックノイズや驚異的なギタースキルで弾くことで、戦禍の爆弾の爆発や、逃げ惑う人たちの悲鳴をギター1本で表したこのパフォーマンスは常軌を逸している。
Yutaka

Yutaka