三樹夫

黒い家の三樹夫のレビュー・感想・評価

黒い家(1999年製作の映画)
3.7
生命保険の顧客がヤバい奴で酷い目に遭うというホラー。原作は読了し、サイコパスに刃物は怖いなと思った次第。保険金狙いで身内をも手にかけるサイコパスを大竹しのぶが演じているが、流石というか当然というかさんまは勿論この映画をネタにしている。『後妻業の女』の時もドキュメンタリーやんと「さんま・中居の今夜も眠れない」でネタにしていた。

オープニングが音楽、映像共にTHE90年代後半という感じがするが、映画全体としても90年代後半感というか世紀末感が漂っている。劇中、社会がサイコパスを増やしているみたいなことを言っているのが象徴的だが、この映画はとにかく制作当時に漂っていた世紀末感を映画の中に盛り込もうとしている。ホラー映画として一番作り込んでいるのは雰囲気だ。
世紀末感と言っても中々どういったものか説明が難しいが、この映画の特に前半のような雰囲気とか『serial experiments lain』のような雰囲気が世紀末感だと思う。陰鬱な感じがし人間の善性を信じられないような感じ。ただしそれが表立っては表出しなくて、ポーカーフェイスで非感情的でありクールネス。例えるなら目の笑っていない微笑みみたいなものかな。90年代はクールネスの時代であると思い、90年代のクールネスを代表するのはたけし映画だったり岡崎京子だったりする。たけし映画では役者に演技をさせず抜けた感じがクールネスを構築する要素であるが(他だとカット割りや構図、色調などでもクールネスを構築している)、この映画では主役の内野聖陽がほぼボソボソ喋りなことで演技を封じ込んでいる。
劇中の灰色の海は印象派的な海で、90年代後半に世紀末的な雰囲気を感じていた時に海を見たとしたらあんな風に感じるという海になっている。どよ~んとしていて気が重くなる。また西村雅彦が出ているシーンではノイズ音のようなものが挿入され、音によっても雰囲気を作っている。ディープキスの音なども強調されていることから、音にこだわって作っているのが分かる。
独特のカメラワークてんこ盛りの前半から、後半からというか大竹しのぶが牙をむいてきてからはほぼ普通のホラーになり、作っている側のテンションも落ちているように思う。それでも殺し合いオッパイ舐めの何これというのがあるけど。そんでもって分かりやすいぐらいボディダブル。
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