月うさぎ

はいからさんが通るの月うさぎのレビュー・感想・評価

はいからさんが通る(1987年製作の映画)
3.0
人気少女漫画の実写化映画というよりも〜
南野陽子が「はいからさんの紅緒になってみました」映画というべき。

昭和のアイドル映画を知るのに最適な1本かもしれません。
今も漫画やアニメの実写化は人気ですが、漫画の世界観を大事にするという発想はこのころの実写映画には乏しくて、原作ファンは涙を呑んで忍ぶか完全無視をするしかないという状況でした。
その中ではこれは良心的なほうです。
映画の中に漫画のきめ台詞やファッションなどが上手に取り入れられ、ギャグネタもそのまんま使っていたりします。
脇役の俳優陣も丹波哲郎と野際陽子などはとてもいい人選だったと思います。
柳沢慎吾はなんで彼なのか、謎すぎですが…。

当時人気絶頂だった南野陽子に「新人」阿部寛をカップリングというのも目玉でした。
阿部君(と当時は呼ばれていた)の俳優初挑戦の作品で、今ではそのために知られている映画かもしれませんが、今の阿部寛を考えると、少尉は人選ミスでしたね。鬼島軍曹なら良かったのに。

南野陽子は同時代に超人気アイドルで女性の敵だった菊池桃子と違って、女性に人気のあるレアなアイドルでした。
思うに、そんなにバッシングを受けなかった映画だったような気がしています。

さて、昭和の実写映画は今の映画とどう違うのか。
それは漫画のキャラクターをアイドルが「演じる」のではないということです。
つまり、アイドルが漫画のキャラクターに扮しているのを「ファンが見る」ための映画。
この微妙な違いは大きいんです。
映画の中の紅緒さんは漫画の紅緒さんでなくていい。むしろ「南野陽子のまんま」でなければならないのですね。

そして、脇役の若い女の子たちは決してアイドルよりも目立ってはいけない!
顔がかわいい場合は名もない女優でなければなりません。そして南野陽子の恋人役の伊集院少尉よりも目立つ男は出てはいけないのです。
原作は花村紅緒に4人の美男が絡むなんともゴージャスなロマンティックなラブコメでして、たとえば「テニプリ」のように、読者は「私は○○派」と、主役を差し置いて好みの男に愛を注ぐことに熱狂したものなのですが、映画ではその要素は完全にカット。
少尉より目立つ役は削除もしくは地味な男に変更されています。
唯一冬星さんをカットする訳にいかず、田中健なんてまあまあのみてくれの俳優を使っていますけれど、キャラが違う~。
冬星さんはクールでサディスト、金持ちの息子で絶世の美男子で服装はダンディでロン毛。
キャー!(≧∀≦)ノ彡☆バンバン!
(私は冬星さん派だったもので…スミマセン)

このように昭和のアイドル映画とは、主役を引き立てるためにキャスティングされ、ストーリーを組み直し、演技などさせずにアイドルのままの顔でスクリーンに登場するというお約束の上で成り立っていたんですね。

「海月姫」と見比べてみてください。
あそこまで女優が素顔を隠してキャラを演じきる実写映画は昔はなかったぞ!と思います。

それでも「スケバン刑事」よりはマシってことで、南野陽子にとっても本作は代表作と言ってよいのでは?
誰がナンノちゃんが悪でちょいエロなマダムが似合う女になると予想できたでしょうか!

阿部寛にとっては……( ̄w ̄) ぷっ

アニメの劇場版が新しく製作されましたが、少尉が可愛すぎて気持ち悪すぎ。
麗しさという概念もギャップ萌えというセンスも持ち合わせていないらしい。
絶対正視できない自信がある。
決して観るまいと心に誓うのであった
月うさぎ

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