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堕天使のパスポートのakrutmのレビュー・感想・評価

堕天使のパスポート(2002年製作の映画)
4.0
ナイジェリアで医者をしていた不法移民の男オクウェと、トルコからの難民女性シェナイの苦難な生活ぶりをドキュメンタリー・タッチで描きながら、ある秘密を知ったことをきっかけに彼らが国外での自由を手に入れるまでをサスペンス・タッチで描いた、スティーヴン・ブリアーズ監督のドラマ映画。

背後に移民問題がありながらも、メッセージ性の強い社会派映画ではなく、移民たちが主人公のエンタメ映画である。主人公の男女を演じたキウェテル・イジョフォーとオドレイ・トトゥの称賛すべき演技のおかげで、映画としての出来はとても良い。特に、母国では医者というインテリでありながらロンドンでは不法移民という底辺の立場に甘んじているという感じを上手に醸し出しているキウェテル・イジョフォーが素晴らしい。彼にとっては、出世作と呼べるべき作品である。オドレイ・トトゥも良いけれど、トルコ難民という設定には少し難がある。彼女であれば、アルジェリアやモロッコなどのフランス語圏からの難民という設定のほうが適切だろう。何気に娼婦役のソフィー・オコネドーが綺麗。

二人の演技に加えて、無駄のないストーリー構成のおかげで、映画に没頭することができる。ひとつ不満なのは、オクウェが抱える暗い過去が何となくほのめかされたまま唐突に明らかになってしまうが、彼のロンドンでの惨めな生活の原因になっているのだから、回想として徐々に明らかにしていくなど、この秘密をもっと活かせなかったかという点。そうすると、もう少し映画に深みが出てくるように思う。
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