このレビューはネタバレを含みます
アメリカを旅して回る、ロシアのバンドの話。
その他のカウリスマキ作品とは違って、明確な主人公が存在せず、架空のバンドの珍道中を描いた作品で物語性は薄め。
彼のフィルモグラフィーの中でも、かなりコメディーに寄せた異色作でしたね。
黒服やサングラス、バンドのロードムービーという点から言って、カウリスマキなりの『ブルース・ブラザーズ』をやろうとしたのかもしれません。
しかし、そこはカウリスマキ映画と言いますか、ただのゴキゲンな映画になるわけもなく、彼らしい悲哀もしっかりと感じられます。
バンドメンバーは悪徳マネージャーに搾取され、酷い目に遭い続ける。
なんで、このマネージャーをクビにしないのかが分からないのですが、支配構造の中で従属してしまう人間の愚かさを描きたかったのでしょうか。
悪徳マネージャーの復活を「民主主義復活」と皮肉るのを見ると、クソな政治家を選び続ける、どこかの国みたいだな~と思ったり。
なんだかんだありつつも、最後は目的地のメキシコに到着。
“ここではない何処か”を描いていたという意味では、これもまたカウリスマキ的なモチーフで。
異色作と言いつつも、やっぱりカウリスマキ映画はカウリスマキ映画だな~と思わされるのでした。