ちろる

招かれざる客のちろるのレビュー・感想・評価

招かれざる客(1967年製作の映画)
4.1
これは一つの大きな愛のお話。
今も消えぬ人種差別の問題を描いている作品だが、胃がキリキリ痛むような被差別者の苦しみにスポットを当てるようなお話ではなく、「リベラル主義者の白人家庭で実際、愛娘が黒人男性を連れてきたら?」
という結婚問題という視点で描いた親しみやすいテーマなのも良い。

娘の連れてきた黒人男性は申し分のないほどの好青年ではあるが、娘がかなり結婚に盛り上がりすぎているところや、2人が出会ってから2週間しか経ってないこと、そして彼が過去に妻を亡くした歳上男性である点など、人種問題だけでなく普通の両親が、まだ若い娘を嫁に出していいのか悩むのには十分な内容だと思う。
しかし、娘はこの数時間でこの結婚を合意させようとしている!
そりゃ葛藤するのも当然だ。

50年以上も前の作品ではあるが、全くもって古さを感じさせることのない生き生きとした会話劇。
黒人のメイドさんの不機嫌っぷりも良いスパイスとなって、より面白くしている。

キャサリン・ヘップバーンの目がほとんどのシーン潤んでいる。
ラストシーン、焦点が当たってないシーンで流すキラキラとした感動の涙も印象的。
母親の涙は子供を愛する心に等しく、だからこそ美しいのだと彼女を観て実感する。

自分たちの価値観を押し付けるのではなくて、徐々に子供たちにとって最善な事はなにか懸命に探ろうとする2つの両親の姿が心を打つ、ひとつの新しい時代の幕開け。
アカデミー賞10部門ノミネートも納得の良作でした。
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