ノットステア

007/慰めの報酬のノットステアのレビュー・感想・評価

007/慰めの報酬(2008年製作の映画)
4.3
○感想
【ボンドにとっての「友達」の変化】
①ハイチのポルトープランスにて。カミーユに向かって自分(ボンド)には「友達はいない。」と言う。
②オーストリアのブレゲンツの空港でカードが使えないと知ったボンドは、受付に「頼みがあるんだが。友達から電話が来る。カイロに向かったと伝えてくれないか。」と言う。この時の友達とはMI6のメンバーのこと。ただし、この場合は、諜報部員であることを隠すために、「友達」という言葉を使ったのだと言える。
③死んだマティスをゴミ箱に捨てる時、カミーユに「友達をそんなふうに…」と言われる。その時ボンドはマティスが友達であることを否定しない。
④飛行機でボンドはカミーユにグリーンを追う理由を、「僕の友人(女性)(=M)を殺そうとしたから。向こう(M)はボンドの母親だと思っている」と話す。(※本当に「友人」と言っていたか曖昧)
④砂漠にあるラ・デュナス・ホテル(las Dunas)で、カルロスを撃つ時に、ボンドは「友達が世話になったな!」と言う。
→ボンドにとって友達とはマティスだけ?では、例えばフェリックス・ライターは友達ではない?

【なぜ、ボンドはユーセフ・カビラを殺さなかったのか】
メドラーノを殺した後、車の中でカミーユは「メドラーノは死んだけど、それが何?」と言う。また、「死者は安らぎを得たかしら?」というカミーユの問いに対して、「死者は復讐など求めない。」とボンドは言う。この時のカミーユの低い声のトーンと暗い表情から、復讐のむなしさを感じたから、ボンドはユーセフ・カビラを殺さなかったのではないか。

【ヴェスパーを許してやれというが、ボンドはヴェスパーの何を許せていなかったのか】

【許せていないのに、なぜヴェスパーの復讐をしようとするのか】

【ボンドにとっての復習相手とは誰なのか】
ユーセフ・カビラ?

【ユーセフ・カビラがロシアに現れることをどうやって知ったのか】


以下、ネタバレあり。








○印象的なシーンとセリフ。ジェームズ・ボンドの人間性や、上記のまとめを考えるのに必要そうなところ。昔、一回で理解できなかったところが気になり、文字起こししたやつの一部。


*イタリア シエナ(オープニング)
荷台にMr.ホワイト。「降りてもらおう。」「まだ死ぬなよ」

「やあ、ミッチェル」とボンドは挨拶
「CIAが知ったら怒るでしょうね」とM。
「連中にはル・シッフルを渡した」とボンド。
「死体をでしょ」
「魂が欲しいなら、神父を雇えばいいんです。」

「ヴェスパーの部屋で彼の髪が一束見つかったから、DNA照合したの。別人よ。」
「髪が一束。そんなセンチメンタルな女じゃなかった」とボンドは言う。
「人は見かけによらないのよ。」
Mがそっぽを向いた隙をついて、写真を左手で抜き取る。
机に手を伸ばしたのが写真を撮るためだということを隠すために右手で酒を飲む。
「だから私はあなたを知る必要がある。あなたが信用できるか。」
「疑ってます?」
「愛したものを殺され、復讐を考えないのは冷徹なクズだけ。」
「心配はいりません。ユーセフなんてやつは重要じゃあありません。ヴェスパーもです。」

*ロンドン
ボンドが殺したために、ミッチェルを尋問することができない。「やりすぎよ」とMは怒る。敵はどんな組織なのか、MI6にどうやってスパイを送り込んだのか。

*Mとタナーとボンド
「ボンドはどこ?」
「(キングス)湾の埠頭に向かっています。」とタナーは位置情報を調べ答える。
タナーから電話。
「スレイトのことを聞いて」とMはタナーに言う。
「スレイトはどうなった?」
「あいつは脈がないと言え。」
「脈がないそうです。」
そこで外線が切断される。「また殺したのよ」とM。

*グレゴリー・ビームにMから電話
ビームは、グリーンには関心がないと言って電話を切る。
「かなり関心を示したわ」とM。
「今関心がないと…」とタナー。
「タナー。今の電話はCIAの南米局長にまわされたのよ?彼らもグリーンを追ってる証拠よ。」とM。

*「007にもチャーター機を。」とM。
「ボンド。手がかりとなる人間を全員殺すのはやめてくれると助かる。」
「わかりました。努力します。」
ここで回線は切れる。「前にも聞いた。」とM。

*オペラ会場
ボンド、トイレの取っ手を壊し、投げ捨てる

*Mとボンド
写真に写った者たちは、シベリアの鉱山の所有者や、テレコム界の大物、イギリス首相付きの匿名大使など。ボンドは、イギリス首相付きの匿名大使であるヘインズのボディーガードを撃ち、屋上から突き落としたと判断される。
Mとボンドの電話。「どこにいるの?」「写真を見ました?」「あの連中のつながりは何?」「イラついた声ですね。」「戻って報告して。」「時間がありません。」「ボンド、また一人殺したわね。」「努力したんですが。」「撃って屋上から突き落としたのに。努力したですって?イギリス特別警護部の者よ。」「…誰の警護でした?」「あなたは特別警護部員を殺したのよ。戻ってきなさい。」「戻ります。あなたを殺そうとしたやつを見つけてから。おやすみなさい。」ここで通話が終了。
「ボンドを止めるのよ」とタナーに指示。「カードをキャンセルして。パスポートも要注意人物に。それからヘインズの情報を集めて。」「タナー。仲間をうかつに信用しないで。私みたいに騙されないように。」
ボンドはボリビアのラパスに行こうとするが、カードが使えない。



*イタリア タラモーネ
ボートで移動。大きな建物。かなり激しくノック。
マティスと再会「何の用だ。謝りに来たのか?」
「思えば若いころは、善と悪の判断が簡単についたものだった。だが年をとってくるとそれが難しくなる。悪党と正義の味方がごっちゃになる。ヴェスパーのことは気の毒だったな。君を愛してた。」「君のために死んだ。」
「本当は他の用もあるんだろう?」とマティス。ボンドは情報が欲しいんだと言って、写真を渡す。
「この写真は破棄しろ」
写真はガイ・ヘインズ。ヘインズが首相に元も近い男であることをボンドは知る。「強い国ほど強い敵を持つ。」(「人は敵の強さによって判断される」)
南米に七年間駐在していたマティスに、ボリビアに一緒に来てくれと頼む。

*ボリビア ラパス
フィールズが予約したホテルに到着。ボンドは入り口でホテルを一瞥した後、タクシーに戻る。「逃がさないわよ。」とフィールズ。
「じゃあ撃て。こんなホテルは嫌だ。」
「休暇中の教師だから安ホテルなの。」
「嫌だ。乗れ。乗れって。」
別のホテルに到着。受付にて。「休暇で旅行に来た、学校の教師だ。宝くじに当たった。」とボンド。
中の案内は受けず、鍵をベッドに投げる。
部屋の中を確認。「見つからないなあ。レターセットが。一緒に探してくれよ。」とボンド。フィールズは笑う。

*「イギリスの諜報部員なのね。私に何の用なの?」
「グリーンのティアラ計画を教えてほしい。」とボンド。
ボンドたちが車を発進させると、後ろからバイク二台が追いかけてくる。
「グリーンは警察にも友達がいるらしいな」とバックミラーを見ながら言うボンド。

*マティスの死
「頼む、傍にいてくれ。」とマティス。マティスは偽名。
「お互いを許そう」とマティス。
「ヴェスパーは、君にすべてを捧げた。許してやれ。そして自分も許せ」とマティス。
マティスをゴミ箱に捨てる。「友達をそんなふうに…」「彼は気にしない」金を抜き取るボンド
マティスがボリビアで射殺されたことをMは知る。警察はボンドが撃ったと言っている。

*Mは外務大臣と会う。
「ボンドは好き勝手動いている。寝返ったらどうする?呼び戻せ。CIAに消される前に」と大臣。



*部屋にはM
ボンドは隣の部屋に行く。
「『石油はない』って言ったけど、フィールズはほら、石油まみれよとM。」
グリーンにやられた石油まみれのフィールズ。
「なぜフィールズが死んだの?彼女の任務はあなたをイギリスに送り返すこと。それだけなのに。あなたの魅力はこういう結果を生む。女性はみんな言いなり。何人死なせたの?調査が終わるまであなたを停職処分とします。銃を渡し、彼らとここを出て。」
男たちに連れられてエレベーターに乗ると、ボンドは男たちを倒し、拳銃を奪う。
廊下で再びMに会う。
「フィールズは勇敢な女性でした。上にそう報告してください。この件の調査を続けましょう。」「それは無理よ。捕まるか、殺される。」すると入り口にスーツを着た男たちが来る。「誰の指令です?」

*ボンドはフェリックス・ライターに電話。
「民間貿易だ。何の用かな?」
「CIAと名乗れよフェリックス。タクシーも住所を知っていたぞ。」
「簡単に住所がわかったなら、訪ねて来いよ、ジェームズ。」
「そっちこそ街に出るといい。」ここで電話は切れる。ビームはその電話を目の前で聞いている。
バーでライターとフェリックスは再開。「地元の人間になりきっていると聞いたぞ」とフェリックス。二人は握手をする。
「南米からコカインと共産主義が消えたら何が残るか考えていたんだ。」とボンド
「CIAは見事にこの国をバラバラにしたな。」
「それはイギリス流の誉め言葉か?」
「正しい側についていると思うか?」
「この国の政権はしょっちゅう変わる。メドラーノより汚い奴もいる。」
「ああ、そこがアメリカのスパイのいいところだ。誰とでも寝るからな。」
「おう。君ともな。そうだろ?」
「君たちは騙されてる。グリーンは自分だけうまい汁を吸い、この国の問題を君たちに押し付ける気だ。」
「ただで手に入るものなどないのさ。」
「君はそんな皮肉を言うやつじゃないはずだ。」
「さあ、どうかな。」
「なぜだ?連れがいるだろ?時間の余裕は?」
「30秒。」
「ああ、それじゃあ急がなくちゃな。」
「メドラーノには軍と警察を買収する金が必要だ。資金はグリーンから出る。その金は砂漠にあるラ・デュナス・ホテル(las Dunas)で渡される。」
「礼を言うよ。」
「ジェームズ。早く行け。」そこで警察からの銃撃が始まる。
逃げるボンド。
フェリックス・ライターは何を話したと聞くビームに「用意した話を」と言う。

*銃の調整をするカミーユ
アドレナリンが経験不足を補ってくれると思うが、復讐心で冷静さを失ってしまうこともある。「深く呼吸しろ」とボンド。(ボンド「深呼吸をして。1発でいい。1発で仕留めろ」)

*カルロスが運転する、資金を乗せた車の上にボンドは飛び乗る。
「友達が世話になったな!」。カルロスを撃つ。車が下がっていく。車は壁に当たり、爆発。火はホテルの燃料電池に引火していく。

*火に囲まれたカミーユ
ボンドは走ってカミーユのもとへ。ホテル内は激しい炎でいっぱい。
「嫌、こんな死に方、嫌。焼け死ぬの。嫌。嫌。」
銃をつかむボンド。「心配ない。大丈夫だ。」
「あなた言った。深く呼吸して、よく狙えって。」
「目を閉じろ。」
ボンドは燃料電池を見つけ、撃つ。

*トランクから投げ飛ばされたグリーン
ボンドはQUANTUMという組織についての話は既に聞いていた。グリーンが話したことを組織は知っている。
「追われるだろうが幸い、ここは砂漠だ。」
エンジンオイルを投げ、「それを飲む前に30キロは歩けるさ。じゃあな、Mr.グリーン」

*ボンドとカミーユの別れ
*「ありがとう」とカミーユ。
*「いいんだよ。大丈夫?」
*「ええ。メドラーノは死んだけど、それが何?」
*「例のダムを破壊しないと。新しいダムもだ。グリーンの部下を使うとしよう。」
*「いいアイデアね。死者は安らぎを得たかしら?」
*「死者は復讐など求めない。」
*「あなたを自由にしてあげたい。でも自分の中に囚われてる。」。(この時のカミーユの声のトーンは低く、表情も暗い。)
キス

*ロシア カザン
潜むボンド。
男女が帰ってくると、銃を突きつけて「座れ」と指示。
「カナダ人か?カナダの情報部員かな?ちゃんとわかってるんだ。この男を通じて、極秘情報を手に入れたはずだ。それをこっちに渡してもらおう。」
ユーセフ・カビラとコリーヌ。
「愛するその男を救うために、君はきっと渡す。美しいペンダントだ。彼からのプレゼントか?似たのを持ってる。」とボンドはペンダントを取り出し、見せる。
「僕の親しい人も、彼から贈られた。名前は?」
「コリーヌ。」
「コリーヌ。QUANTUMのスパイが潜入していないか、上層部にチェックさせろ。情報が敵に漏れてる。早く行ってくれ。この男とはまだ話がある。」

*エンディング
「彼は生きてる?」
「ええ。」
「驚いたわ。探し物はあった?」
「はい。」
「よかった。後悔はないわね?」
「ありません。あなたは?」
「ない。私はプロよ。」
グリーンはボリビアの砂漠で死んでいるのが見つかった。後頭部を2発撃たれて、エンジンオイルを飲んでいた。ボンドは何も思い当たらないという。
アメリカ側とは話がついた。フェリックスは局長のポストに昇格した。
ヴェスパーのことはMの言うとおりだったとボンドは言う。
「戻ってきて」というMに「出てはいません。」と言う。
ネックレスを捨てる。