いかえもん

復讐するは我にありのいかえもんのレビュー・感想・評価

復讐するは我にあり(1979年製作の映画)
4.3
緒形拳さんで、さらにもう1本。評価高めなんですけど、あらすじを読んでちょっと躊躇していた作品。えげつない映画でしたけど、見てよかったというか、なんというか、ずっしり重くもあり、後味も決して良いわけじゃないのに、心にくっきりと足跡残された感じの映画でした。さすがアカデミー賞作品。

5人を殺害した男の犯行と逃走劇を描いた実話ものです。
こちらは時間軸のいったりきたりはあれども、「薄化粧」よりはわかりやすい作りになっています。ただね、犯行が多すぎる上に、女や老人をだましたり殺したり、その殺しのシーンも何とも言えないリアルさで(もちろん実際見たことはないですけど、こんな感じなのかも…と思わされるリアルさ)、気分はあんま良くないどころか、恐怖です。おまけにベッドシーンがめちゃ多いので、子供は絶対禁止!

オープニングのふてぶてしい緒形拳がものすごくかっこいい。そして、その後の回想シーンからいきなりの殺人、そして血の付いた手を自分の尿で洗って、その手でその辺の柿をもぎ取って食べるという、まあここまで見るだけで、この男の人間性に震え上がります。

ちょっと書ききれないんですよね、見どころというかインパクトが多い映画で書きたいけどネタバレになるし、ネタバレにしてしまうと観てもらいたくてもレビュー読んでもらえないし…。

犯人は死刑になっているので、その動機のところをどう解釈していくかというか、映画を観てると、そこに動機や理由を求め、理解しようとしたくなるのが人間なんですかね。
結局のところ父親への愛憎がものすごいひん曲がった形で出てしまったという感じがします。父親の信仰心に疑問を抱き、その欺瞞に満ちた父親を殺してやりたいくらい憎んでいるけど、その血は自分の中にも流れていることにまた狂いそうなくらい苛立ちを感じ、どうにかしてこの父親に復讐してやりたいと思っている、だけど殺せない。それはきっと子供のころからの宗教的なものが沁みついていて、自分でも気が付いていないけど、どこかに父親への感謝の気持ちがあるんだと思う。実は、この主人公こそが一番信仰心があって、だからこそ人一倍父親を憎んだのかもしれない。もちろん間違った方向にいってるけど、父親を殺したくても殺せないのも、そういう信仰心が芯のところにあるのかなと。それで、父親への憎しみが回りまわって、同じ血を持つ自分を殺してしまいたいというところにきてるんだけど、自分で死ぬって相当勇気がいると思うんですよ。だから、人を殺すことで自分の中の人間性を殺しながら、誰かに殺されるのを待っている、そういう感じがしました。強がっているし、実際恐ろしい男なんだけど、どこかに弱さがある感じ。その弱さが、自分で死ぬ勇気はないし、一番殺したいやつも殺せないということなんじゃないかなと。

親子の対面シーンは、まるで鏡のようで、それは心の中のどろどろしたものが表に出たかどうかの違いだけ。人間は誰しもそういう部分が多かれ少なかれあると思うし、親子って己の姿を一番写し出すもので、この世で一番血が近い。だから余計に大好きだったり毛嫌いしたりするのかもしれない。このシーンの緒形拳さんと三國連太郎さんの演技合戦は息をのむ迫力でした。

あと、多くの人が書かれている通り、倍賞美津子さんのお美しいお体、あの色っぽい背中のお肉の付き具合!三國さん、お仕事とはいえどんな気持ちだったんだろう…。

緒形拳さんって若い頃、ちょっとアンディ・ラウに似てる。倍賞さんがお嫁にくるところで散髪屋から出てきた緒形さん、かっこよすぎて、きゃー!ってなった。

あと、洋服ダンスの扉がギ~ッていうのが、もう怖すぎ!あれ下手なホラーより絶対怖いわ。

それと、小川真由美さんとの関係についても考えているんだけど、大きくネタバレな上にますます長くなりそうなのでやめときます。

…ってこんなに長々書いたらやっぱりレビュー読んでもらえそうにないな。