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ある殺し屋の鍵のbluetokyoのレビュー・感想・評価

ある殺し屋の鍵(1967年製作の映画)
3.1
ある殺し屋の評判がよかったので、急遽、次回作が作られたようだ。話に繋がりはなく、設定だけ同じである。
ばたばたと急いで作ったためか、前作に比べて、筋運びの洗練さがまったくない。
タイトルになっている「鍵」だが、たいした落ちネタにはなっていないので、まあ、なくてもよかったかもしれない。
ただ、もし、第三作を作るとしたなら、それなりの役割は十分に果たしたと思う。それどころか、十作品とまでは言わないが、七作品ぐらいは続いただろう。

簡単にあらすじ。
脱税王の朝倉がついに捕まりそうだ。
そんな朝倉、曰く、他の悪い奴らも全員、道ずれにしてやる。
悪徳政治家の北条。あのやろー、オレも道ずれにされたらたまらん、ということで悪徳土建会社社長の遠藤に、朝倉殺しを指示。
遠藤は、暴力団組長の石野に、朝倉殺しを指示。石野は部下の荒木に、朝倉殺しを指示。
荒木は、普段は日本舞踊の師匠をやっている殺し屋の新田に、朝倉殺しを依頼する。
朝倉が、伊東の観光ホテルにいるところを、新田は首尾よく殺害。
帰る段になり、車に乗ったところ、ブレーキもサイドブレーキも効かない。崖から転落してしまう。
石野と荒木、朝倉も死んだし、新田も死んだ、よかったと喜んでいた。だが、新田は脱出していた。
新田は、日本舞踏の生徒の秀子に荒木を呼び出すように頼む(荒木が路上で秀子に声をかけただけなんだが。それに新田がなぜ知っているのだろう)。荒木が現れたところを新田が捕まえ、誰に頼まれた、と脅すと、石野だ、と答える。石野のところに行って、誰に頼まれた、と脅すと、遠藤だと答える。
新田、石野、荒木の三人で車に乗って、遠藤のところに向かう途中、石野と荒木が新田に襲い掛かってきたので、返り討ちにして殺害する。
秀子は実は遠藤の情婦(都合よく)で、遠藤から新田と会わせろ、と言われているので、踊りの会に出ると言っておいた。新田からも遠藤に会わせろと言われたので、踊りの会に呼んだ、と答えた。
踊りの会に遠藤は現れず、代わりに殺し屋に殺されかけた。
秀子と会うと、自分の住むマンションに、遠藤がボディガードを連れて来る、と言った。
新田が、秀子の住む部屋に侵入すると、はたして遠藤がいたので、捕らえて、誰に頼まれた、と脅すと、剃刀を持って襲ってきたの返り討ちにして殺害する(自分で転んで刺さったのかな)。
偶然に電話が掛かってきて、先生が、11時に飛行機で飛び立つ、と知らせてきた。飛行場に電話をかけると、11時に飛び立つのは、北条だと答えた。それで、遠藤に頼んだのは、北条だとわかる。
新田は、飛行場に行き、新聞記者に変装して、北条に近付き殺す。終わりである。

で、「鍵」というのは、某駅のコインロッカーの鍵のことで、そのロッカーに、新田は殺し屋として得た報酬をしまっていたわけだ。その鍵を北条殺害の後に落としてしまったのである。あわてて拾いに戻り、とりあえず見つけることは出来たのだが、そのコインロッカーのところに行ってみると、警官が何人もいて、ロッカーの扉を片端に開けているところだった(警察の捜査なので合鍵は持っているのだ)。なんで、そんなことをやっているのかというと、何者かが、そのロッカーに時限爆弾を仕掛けたというタレこみの電話が警察に掛かってきたのだ。新田のロッカーも開けられ、中から札束の入ったカバンが二、三出てきた。そこまで確認すると、新田は諦めて、その場を去るのだ。そこで終わっている。

警察への電話は、秀子、ということにしたいわけである。遠藤を殺害したあと、秀子は新田に、一緒に連れて行ってくれと懇願するのだが、カネで動く女にようはない、と言い捨てて、新田はその場を去っている。そのあと、秀子はどっかに電話を掛けるのである。ところが、誰にどのような電話を掛けたのかはわからない。それどころか、そもそも、秀子が新田のコインロッカーの場所、いや、その前に、殺しの報酬をそうやって、コインロッカーにしまっていることさえ知らないように思うのだが。

ということで、ストーリー的には不思議なのだ。ただ、秀子は、遠藤殺害後に新田から、なぜか、二つの札束を貰っている(二つの札束でいくらなのかわからない)。ということは、この映画の中で唯一、得をしたのは、秀子ということになる。間違いでなければ、遠藤に、秀子は、報酬が多い方の味方になると言っていたが、実際は、そうではなく、新田の味方になったのだ。新田は、そのことに気付いていない、ということでいいのかな。
まとまっていない作品ではあるけど、なんとなく好きな作品だ。
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