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エイリアン・ネイションの一人旅のレビュー・感想・評価

エイリアン・ネイション(1988年製作の映画)
3.0
グラハム・ベイカー監督作。

多数のエイリアンが新移民として流入した近未来のロサンゼルスを舞台に、人間とエイリアンの刑事コンビが麻薬組織に立ち向かう姿を描いたSFアクション。
エイリアンと人間が共存する社会描写が興味深い。ファストフード店にはエイリアン専用のメニュー(ビーバーの生肉)があったり、エイリアンもそれぞれ家庭を築いていたり、人間とエイリアンが同じ職場で協力して働いていたりする。エイリアンの地位を向上させるため短期間で優遇的に昇進させるなど、社会の弱者であるエイリアンに対して人間臭い配慮が見られるのも妙に現実的で面白いのだ。
頭部に細かい斑点がある点を除いて人間とエイリアンのビジュアルにはほとんど差がないが、脇の下が急所だったり、腐った牛乳が大好物という細かい設定が活かされた演出が可笑しい。
エイリアンに蔓延る麻薬やエイリアン同士の殺人事件を捜査するというストーリーは、現在の人間社会が抱える問題をそのままエイリアン社会に適用したものになっている。人類対エイリアンといった壮大な構図ではなく、あくまで人間社会に溶け込んで生きるエイリアンの犯罪を糾弾する内容になっている。典型的なエイリアン侵攻物と比べると大幅にスケールダウンするが、ある意味『第9地区』の先取り的SF作品とも言えるため斬新だ。
そして、これも良くある警官バディムービー物と何ら変わりない展開なのだが、人間とエイリアンの刑事コンビが織りなす異種族間の交流も本作の見どころになっている。エイリアンを憎む人間刑事がエイリアン刑事と行動をともにするうち徐々に打ち解け合う。人間界のくだらないジョークを語り合ったり(二人のぎこちない空気が笑える)、お互いに家族の写真を見せ合ったり、アルコールと腐った牛乳で乾杯する二人の姿はシュールで可笑しく、種族を越えた友情を感じさせるのだ。
全体的には悪くない作品だったが、できればもう少しエイリアンのビジュアルに拘ってほしかった。いっそのことリドリー・スコットの『エイリアン』並みにエイリアンエイリアンしたエイリアンにすればまた違ったテイストが生まれたかもしれない。
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