めしいらず

王女メディアのめしいらずのレビュー・感想・評価

王女メディア(1969年製作の映画)
3.6
父親を叔父に殺されケンタウロスに育てられたイアソンの生い立ちから、金毛羊皮を巡るメディアとの運命的な出会いを経て結ばれた二人。後に国王クレオンの差し金によってイアソンは妻を捨て王の娘婿となり、メディアは国外追放を言い渡される。それでも彼女は夫へのこれ以上ない復讐をきっちり果たしてから散る。実の弟を殺害してしまうほどイアソンに入れ込んだメディアの強烈過ぎる愛情が、彼の裏切りによって強烈過ぎる憎悪に置き換わってしまう必然。その憎しみの深さを示して余りある復讐の顛末。メディアは国王とその娘を呪い殺し、続いて二人の最愛の息子たちまでも手に掛け、その亡骸を抱かせてくれと頼むイアソンをピシャリとはねつけ、まさに地獄の業火に焼かれる罪人が如くに、己の憎悪が放った炎に巻かれて彼女は死ぬのだ。全てを一度に失ったイアソンは、メディアが目論んだ通りに無間地獄に突き落とされた。メディアの復讐は果たされた。
画作りに凝ったトリアー版に引き続いて、この生々しくも美しいパゾリーニ版を鑑賞。こちらの方が取っつきにくい面はあるのだけれど、以前に観たときよりも断然面白く感じた。オペラ歌手マリア・カラスをメディア役にキャスティングしたパゾリーニの才覚がお見事。彼女も初めての演技でその期待に応えた。炎の中のラストカットの潔さが強烈である。再鑑賞。
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