マヒロ

アルファヴィルのマヒロのレビュー・感想・評価

アルファヴィル(1965年製作の映画)
3.0
人工知能“α60”に支配され、人間が人間らしく生きることを禁じられた街“アルファビル”に、記者と名乗るイワン・ジョンソンという男がやってくる。彼の正体は潜入捜査中の探偵レミー・コーションで、アルファビルの中で行方不明になった同僚のエージェントの捜索と、アルファビルの生みの親であるブラウン教授の逮捕が目的だった……というお話。

ゴダール監督唯一のSF映画らしい。とはいえセットを立てたりそれっぽい小道具を用意したりしてるわけではなく、普通の街でのロケ撮影の映像にライトの点滅や電子音のカットを挟み込むだけで近未来っぽさを演出しているというお手頃仕様。ただ、それだけで普通にSF映画に見えてしまうというのが面白い。アクションシーンも、殴ったり銃撃する瞬間は全く見せずぶっ倒れたり吹っ飛んだりしてる人だけを映し出すのみと、結果だけ見せたら分かるだろと言わんばかりの省エネ的手法が潔い。
ストーリー自体はかなり真っ当なSF作品で気を衒ったところは全くなく、人工知能に対抗する人間らしさの象徴として“詩”を持ち出してくるあたりとか、映画全体の素っ気なさに反してかなりロマンチックなメッセージ性もある。

『ウルトラセブン』の一部のエピソードがヌーヴェルバーグに影響を受けたと聞いたことはあるけど、低予算で作り上げられたSF世界の無機質な雰囲気とか、画面が意味もなくネガポジ反転したりする奇抜さとか、確かにこんな話あったなーと思える部分が結構あったのも面白かった。

(2023.40)
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