翔

メメントの翔のレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
3.5
ちょいと前に何故か前二作品だけ観たままスルーしていた「ダークナイトライジング」を鑑賞した。そしてつい先日1日しか記憶が残らないという設定の映画「リピーテッド」のレビューを書いた。そんなこんなの繋がりで思い出したのがこの「メメント」。過去に五回ほど観たことがあるのだけれど記憶は記録より曖昧なのでもう一度観直してここにメモを書いておこうかな。

記憶関連作品の金字塔的な扱いを受ける本作品。でも実はそこまで絶対的名作といった感じの全面賞賛を受けているというわけでもなく、どちらかというと賛否両論といったイメージがある映画。その理由としてはやっぱり複雑極まる構成、ひいてはストーリーそのものだろう。まず作品構成が異常に難しい。基本的に時系列を遡る形で描かれている。どういう事かというと、まずエピローグなのである。まぁそこは大して重要ではないかもしれない。そしてそこからは延々と遡り続ける。しかも幕間にはモノクロでプロローグが断片的に入るという鬼畜仕様。つまりアルファベット順に時系列を並べた場合、この映画では「Z→A→Y→B→X→C→W→D→V」という具合で映像が流れるという事。超難解!それがどういう事かというと、登場人物達は当然のように続いていた話をそのまま話してくるわけだ。観ているこちらとしては「いや、なんの話や?そしてお前さんは誰や?」となる、まるで記憶がなくなってしまったかのように。
ただでさえ物語の逆流になんとかついて行こうとしているのに、回想中にもう一度回想が入ってきたりする。そういうわけで一度観てはいスッキリ!みたいな事はまず無いんじゃないかな。何回観てもスッキリしないって方も勿論いるだろう。そもそもスッキリするって話でも無いし。

では何故こんなに鑑賞難易度がやたらと高い映画がここまで有名で高名なのか。それはやっぱり場面と設定を限り無く活かした物語そのものの部分がとても重厚だからではないかな。確かにメチャメチャ難しいのだけれど、是非一度、若しくは二度三度観て欲しい。その内に各登場人物の行動や発言の意味が理解できてくるし、各場面の事態も飲み込めてくる。そうなってしまえばどれだけ上手く作られているかが分かってくる筈。

そしてやっぱりこういった遡る形式の映画のハードルと言えば、本来では前菜である場面をメインディッシュに持ってくるという事の難しさ。カタルシス的な物は無いが、ズンとくる。いや…なるほど…と。

ここまで能書きたれてきたものの、僕自身も「メメント」を完全に理解できたわけでは無いと思う。そんな意味もありつつの点数ということで一つ。
翔