西東京

静かな生活の西東京のレビュー・感想・評価

静かな生活(1995年製作の映画)
4.0
大江健三郎のフィクションとノンフィクションが曖昧に混ざった作風が、エッセイのような物語としては過剰な緑や非現実な美術セット、唐突なCGという戯画的な画作りによって表現される。前半は顔に緑の木の影が揺らぎ、後半はプールの水が顔に反射する。

例えば、冒頭の磁石になった障害者と噂話をするママさんたちと主人公たちのそれぞれの距離とか、本を読んでいる時に感じる広さは映画によって10分の1に短縮されている。文字から浮かぶ無限の広さが映画という四角いフレームに収めた時に必要な圧縮を、伊丹十三は戦略的に(やけくそに)、逆により窮屈に押し込める。何もかもが狭く、全員の距離が近い。そして感情はカメラに向かって放射される。映画の単一指向性と本の無指向性。
物語は妹の目線から語られるので、兄のイーヨーを見上げような視点が本を読んでいる時に感じていたけど、映画ではその角度からの撮影はなかった。
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