両目洞窟人間

復讐 THE REVENGE 運命の訪問者の両目洞窟人間のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

90年代に黒沢清監督は哀川翔と10本のVシネマを作った。90年代の哀川翔人気はものすごかったそうで、黒沢清監督に初めて会ったときに哀川翔は「俺の映画は出したら売れるんだから、監督が作りたい映画作ってよ」と言ったそうです。超かっこいい。
そして黒沢清監督は哀川翔のVシネマで演出を磨いていったとのこと…。今作はそんな中の一本。発表は97年。黒沢清監督は同年、名作『CURE』を発表している。『CURE』で印象的なシーンにでんでん演じる警官が交番で部下を撃ち殺すシーンがありましたが、あのシーンの雰囲気でアクション映画を作ったらどうなるんだろう?みたいな実験作のような作品でした。
銃撃戦のあっけなさ、というか日常の延長のような緩んだ雰囲気から行われる銃撃。そのあっけなさがとても恐ろしい。長回しや役者やカメラの動線がものすごくかっこいい。特に廃工場での銃撃戦の、各々の動き方は超かっこいいです。それと同時にかっこいいんだけども、それはいわゆる血肉沸き立つアクションの動きの良さじゃなくて、まるで全員が幽霊のように生気のなく、ふわーっと動いていくのがまたたまらないし、その一瞬あとには死んでいるのもたまらない。生きている人と死んでいる人の境界線がぼんやりとしかなくて、でも確実にそれを超えてしまったら、人はただの肉になってしまう。
にしても全編通して怖い。ずっと怖い。ずっと変な雰囲気だし、全貌の見えなさが気持ち悪い。
脚本は『リング』や『呪怨 呪いの家』の高橋洋。
殺し屋を斡旋しているあのクリーニング屋は一体なんなのだろう。
そして繰り返される「心が折れた人々」の描写が嫌な後味を残していく。
観客は映画をただ見るしかできない。干渉できないものだとすると、目の前で暴力によって心が折れてしまう人を見るってのはめちゃくちゃ怖いことなんじゃないか?そんな恐怖が沢山ある映画でした。
ラストの哀川翔の向こう側にいっちゃった表情凄かったな。ぞっとしちゃった。そう思ってたらエンドクレジットでは哀川翔が翔兄貴として歌を歌っていた。やっぱり哀川翔はスターだったんだなと思った。
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