エド・マクベインの原作「キングの身代金」に着想を得て黒澤明監督ら4人で脚色して映画化したサスペンス。
英題:High and Low
(1963、22時間23分、モノクロ、但し1場面だけ着色あり、東宝スコープ)
横浜の高台に豪邸を構える製靴会社の常務・権藤(三船敏郎)に、子どもを誘拐したという犯人からの電話が入るが、実際に誘拐されたのはお抱え運転手の息子だった。
社内の権力闘争で切羽詰まった金が必要だった権藤は、要求された身代金3000万円を支払わないと決める。
ところが、反対勢力に丸め込まれた秘書の裏切りにあい、やむ無く支払に同意する…。
~出演者~
①製靴会社の権藤金吾常務( 三船敏郎):「ナショナル・シューズ」の工場担当。良質な靴を作るという強い信念を持つ。
・妻、伶子(香川京子)
・息子、純(江木俊夫):少年。
・秘書、河西演(三橋達也)
・専属運転手、青木(佐田豊):息子・進一(島津雅彦)を誘拐される。
②警察
・戸倉警部( 仲代達矢):誘拐事件の捜査担当主任。
・田口部長刑事(石山健二郎):通称「ボースン(水夫長)」。いかつい顔。
・捜査本部長(志村喬)
・捜査一課課長(藤田進)
・荒井刑事(木村功)
・中尾刑事(加藤武)
・村田刑事(土屋嘉男)
・山本刑事(名古屋章)
③誘拐犯・竹内銀次郎(山﨑努):金持ちに偏狭的な憎悪を持つ。
④ナショナル・シューズ重役
・宣伝担当、神谷(田崎潤)
・デザイン担当、石丸(中村伸郎)
・営業担当、馬場(伊藤雄之助)
⑤その他
・新聞記者(千秋実、三井弘次、北村和夫、大滝秀治…)
・債権者(山茶花究、浜村純、西村晃)
・靴工場の工員(東野英治郎)
・病院の火夫(藤原釜足)
・麻薬患者(菅井きん…)
・麻薬街の女(富田恵子)
物語は大きく分けて4部構成。
①「権藤邸」での犯人からの電話への対応。
②「新幹線」における金の引き渡し
③「屋外」での犯人の捜索
④「…」での犯人と権藤の対峙
①→三船敏郎は、地位や財産を捨てるか子どもの命を救うかの二者択一を迫られ苦悩するが、演技が一本調子なのが気になる。
②→受渡しシーンは何台ものカメラを使って撮影され、本作の白眉として名高い。
③→犯人を洗いだし追い詰めていく過程が丁寧に描かれていて、一番好き。
但し、ドヤ街に溢れるヤク中毒者の場面は異常な程過剰。
④ラストシーンにおける山崎努の演技(表現方法)については、黒澤監督らしい大袈裟さがいかにも"作り物"という感じがして、私にはしっくりこない。