masahitotenma

山の音のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

山の音(1954年製作の映画)
3.5
川端康成の名作小説を成瀬巳喜男監督が映画化。
老境に入った男が同居する息子の嫁に抱く複雑な感情を綴る。
脚色は水木洋子。
(1954、1時間34分、モノクロ、スタンダード)

老境に達した尾形信吾(山村聡)は、妻(長岡輝子)と、修一(上原 謙)・菊子(原節子)の長男夫婦と一緒に鎌倉に住んでいる。
同じ会社に勤めている息子・修一には愛人がいた。そのため
いつも帰りが遅く冷淡な態度をとる夫に嫁の菊子はじっと耐えていた。
慎吾はそんな嫁をいつも気遣っていたが、嫁の菊子にとっても優しくいたわってくれる舅・慎吾の存在が救いとなっていた。
息子夫婦の関係が破綻しかける中、嫁に行った娘(中北千恵子)も子どもを連れて戻ってくる…。

~登場人物~
①緒方慎吾(山村聡):主人公。会社の重役。若い頃、妻の姉(結婚した後に亡くなった)に恋心を抱いていた。
・妻、ヤスコ(長岡輝子)
・息子の嫁、緒方喜久子(原節子)
・息子(兄)、緒方 秀一(上原 謙):父と同じ会社に勤務。愛人がいる。
・娘(妹)、相原房子(中北千恵子):幼子2人を連れ実家に戻る。
・娘の長女、里子(斎藤史子)
②その他
・娘の夫、相原(金子信雄)
・勤務先の事務員、谷崎秀子(杉洋子)
・秀一の愛人、きぬこ(鷲見理恵子):戦争未亡人。
・きぬこの同居人、池田(谷阿弥 八津子):子どもは夫と住む。
・慎吾の友だち(十朱 久雄)

「緒ずれ」と「御ずれ」
「子ども(の能面)」=原節子
「お腹の子」×2

①山村聰との原節子の間に存在する親密さや境界線上にある恋心の危うさ、そして切なさ。
②川端が好んだエロチシズム。
③原作のシチュエーションや余韻とは異なる、新宿御苑での、これまた美しいラスト・シーン(構図)。
④かつて会社の意向に従った「めし」とは違い、原節子を自立心のある女性として描いている。
⑤なお、川端康成原作の映画化、私のナンバーワンは、岩下志麻がヒロイン二役を美しく演じた「古都」(1963、監督は中村登)。
masahitotenma

masahitotenma